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DJ Kennedy/life is damn groovy

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December 20, 2010
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カテゴリ:Homesick


 558.jpg






 フロアには無造作に置かれた100個入りクリスマスライトのボックス14個とオーナメントの入った
 段ボール3つ。それらを囲む6人。ついさっきまでの子供染みたダンスでまだ息が切れている。


 「ムリ、さすがにこれは」
 「だよね」
 「そんなこと言わないでどうせならこれもさ、やっちゃおうよ」(←ここぞとばかりに私)


 深夜1時を過ぎて酔いも深まる中で、誰が好き好んで手に傷を負いながら朝まで大量の
 電飾なんかと格闘しようか。一応お願いしてみちゃった私も私であった。


 「そうだよね、ごめんごめん。また時間がある時に手伝って?」(約束は取り付ける)


 これでこの件は収まるはずだった。が。首から電飾のコードを垂らしスウィッチを入れて、
 黙っていればDylan McDermottにそっくりだと評判の面差をピカピカ光らせへらへらと
 笑っているドレイク。その横に立ち何故だか窓の外を見つめるモニーク。そしてふたりに
 無言で並ぶ私達。クリスマスツリーはムリ、けれどこんなにたくさんあるクリスマスライトを
 このまま放っておけるほどこの6人は冷静(おとな)ではなかったのだった。
 


 「これしかないだろう・・・。スコッチテープ」


 
 言われるままにセロテープを彼に手渡し、それから早速デザインの構想で盛り上がる。
 ツリーに飾るはずのライトでリビングルームの窓をデコレイトしようという計画。
 床に座り込みデザインを捻り出すと、ここにだいたい何個のライトを使うとか、私はさておき
 5人のインテリグループはあれやこれやと実に手際よくプロセスを固めていく。


 「あ、そうだ」


 ドレイクが今も結婚相手に巡り合えないのは、恐怖の釣り好きである他にこの、繊細さの欠如が
 原因になっているのではと心配になるところであるのだが、とにかく彼はひとり思い立つと、
 ザザザとブラインドを上げ、そのまま外してしまった。一瞬目が点、けれどその(余計な)潔さに
 感銘を受けているらしき友人4人を見れば「ええ?そりゃないぜセニョール」なんて、
 言えるはずもなかった。
 

 それからはもう、何かが乗り移ったかのように黙々と作業に取り組む6人。電飾のコードをつなぎ、
 絡まないよう5人が1列になってコードを伸ばし、窓際でライトを貼り付けるドレイクを助ける。
 

 この時の会話を少しも覚えていないから、おそらく本当に話をしなかったのではないかと思う。
 あるいは全員が相当に酔っていて覚えていないか。確かあの晩はバーでビアを2本ずつ
 (と言っても日本の大瓶などではない)空けた後、私の部屋に戻る途中でやはりビアを
 相当数仕入れていた。ついでにワインも買っていた気がする。

 


 空が白んできた頃、窓のデコレイションは完成した。ベルをかたどり、その上は"No?l"の
 文字を入れた。そして残りのライトは窓の端からリビングルームを這うように貼り付けられ、
 部屋はいつもの10倍は明るかった。7時頃だっただろうか。アメリカは冬時間で朝の来るのが
 遅いけれど、さすがにこれからライトを楽しもうという気分にはなれず、その夜改めて
 点灯式をしようという約束でグループはいったん帰って行った。





                img056copy - コピー.jpg
                      my Christmas tree





 夕方6時に再び集合。
 

 「一発勝負で、もしつかなくても、それならそれで笑い飛ばして終わろうぜ」
 「でもちょっとドキドキするね」


 パムが行った。「ねぇ、誰がここに残ってスウィッチを入れる?」
 それもそうだ。皆点灯式の際にはオフィスビルディングとレジデンスをつなぐ中庭からこの窓を
 見上げたいに決まっているのだから。となればくじ引きだ。同じ長さに切った紙6枚から1枚だけ、
 先に赤いペンで「ポテトヘッド」と書くとドレイクが先の部分を隠すように握る。「さぁ、引いて」
 適当に私はこれ、オレはこれ、と6人が自分の紙を決めていっせいに引く。


 こういう時に限って強運の持ち主ドレイク。「なんだよ~」


 そうして6時55分、「しっかりやってくれよ」と男の子達がドレイクの肩をたたくと私達は
 中庭へ。皆で窓を見上げていると、コンドミニアムのセキュリティが寄って来て何をしてるのかと
 尋ねる。これからウィンドウ・デコレイションの点灯式なのだと答えると、彼は同僚をオフィスから
 連れて来て私達に加わった。中庭を突っ切って行こうとする人達も足を止め、最終的にはそこに
 だいたい20人ほどが集まった。


 6時59分50秒。カウントダウンの時が来た。10. 9. 8. 7. 6. 5. 4. 3. 2. 1. zero!




 ・・・・・・・・・・・・・・・・




 決して期待を裏切らない男ドレイクは、見事に記念すべき点灯時間を遅らせてくれた。


 「ドレイク!」「ドレイク!」

 
 知らない人まで一緒になって叫ぶと窓の奥からドレイクの顔が現れ、ハッとした顔で消えた
 次の瞬間、窓全体がパッと明るくなり、グリーンのベルに赤い文字を囲むクリアの
 チェイシングライトが流れるように光り始めた。周囲はどよめき、拍手も起こった。
 私達は室内で静かにひとり待機しているドレイクを余所に通りすがりの人達とこの喜びを
 分かち合い、どういうわけだかほんの少し、英雄気分にすらなっていた。



 酔った勢いで始めたお遊びだったが、この日から、ノエルのライトはちょっと人気者に
 なって、そのうちにトライポッドを立てて写真を撮る人まで出現した。私は微かに重たい
 使命感に駆られ、毎晩6時にはライトのスウィッチを1ヶ月間欠かさず入れていた。
 そして最終日には、あの窓が入るようにして6人で記念撮影もした。




 これが、今も私達の小さな武勇伝としてお酒が入れば盛り上がる、クリスマス・テイル。



 せっかくだからその時の写真を載せてみようかと必死に探したけれど結局見つからず、
 出て来たのは作業中の窓を写したたった1枚だった。それが、これ。






       559.jpg






 そう言えば先日他サイトでこの話をし、「覚えている人はいませんか?」と呼びかけたところ
 あるニューヨーカーの女性が「勿論覚えてるよー!」というお返事をくださった。彼女も
 あの界隈に住んでいたと言う。まったく違う世界で知らないまま生きて来た人が私達の窓を
 凍てつくニューヨークの夜に見上げてくれて、しかもかなりの時が過ぎた今も記憶の片隅に
 ひっそりと置かれていたのだと知って、不思議な、でもとても温かい気持ちになったのだった。



                                      おわり



   Classic!
   brendalee.jpg beachboys.jpg ella.jpg elvis.jpg
   (Click and enjoy the music!)
 


 
 















 


 





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Last updated  December 21, 2010 04:19:39 AM
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