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カテゴリ:Simple Pleasures
8日の聖母懐胎祭を見逃したのはたった二日間のポルトガル滞在における後悔のひとつだったが、代わりに短い時間の中でいくつかリスボンに残してきたものがある。 「ここに地終わり海始まる」 ポルトガルが誇る詩人のルイス・ヴァス・デ・カモンイスによる"Os Lusiadas"の中の有名な一節。ここロカ岬に立つと様々な思いが日の傾き始めた大西洋に浮かびあがった。陸地の終わりには、眼には見えない海の向こうの夢がこちらに確かな気配を伝える。その昔、この地から大海原へ向かって行った勇敢な人達は数知れない世界中のミステリーに胸を躍らせていたのだろう。そして、純粋な好奇心が顔も言葉も違う人たちに絆をもたらしたのだろう。私が今、この最果ての地にいることもとても不思議に感じられた。私をここに呼び寄せたものは・・・? この時既に、私は父からニューヨークへ帰るよう言い渡されており、他ならぬ母の病気なのだもの、二つ返事で里帰りの飛行機を予約したものの、1年以上恋焦がれてようやくその思いが叶ったというのに、私の運命は少々いたずらが過ぎる。そう思わずにはいられなかった。 恨めしい気持ちで水平線を眺めると、ふと1枚の写真を思い出した。以前私の友人が撮った、海に浮かぶ黄金の太陽が美しいサンセット。もしかしてあの写真は、ここで写したものなのではなかったか。そう思えて私は、ひと目あの夕陽を見るまでこの岬に立っていようと決めたのだった。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 14, 2011 12:57:14 AM
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