ザ・テラー 極北の恐怖
ダン・シモンズのホラー小説です。 ダン・シモンズといえばSF大作『ハイペリオン』シリーズで有名ですが、デビュー作『カーリーの歌』をはじめとしてホラー作品でも巨匠として知られる作家ですね。私も個人的にお気に入りの作家です。 本作は北極探検史上最悪の遭難事故と言われる、サー・ジョン・フランクリンの北極探検を現実の資料をもとに創造を交えて描いた作品です。サー・ジョンの探検隊の各員がどのような最期を遂げたかは実際には判明していないため、資料などを基に物語を作り上げているのですね。そして、恐怖のスパイスとして、本作では『怪物』が存在しています。 サバイバルホラーとしては出色の作品で、壊血病などで倒れていく船員たちの様子が実に痛々しく、極寒の北極圏描写は実に寒々しく、圧倒的な重さを感じさせる作品になっています。分厚い上下巻の作品ですが、一気に最後まで読んでしまう迫力がありますね。 各人のキャラクターを掘り下げつつ、事象を描いていく手腕はさすがダン・シモンズといった感じ。 しかしながら、一点、スパイスとして出した『怪物』があまり効果的な存在になっていないような気がするのが残念ですね。この存在をあえて出す必要はなかったかも、と思ってしまいます。他方で、エスキモーの神話と交えた怪物の存在を考えれば、まあ、悪くはないんですけどね^^; いずれにしても、寒い冬がますます寒くなる逸品。オススメです^^