惑星ソラリス
随分前にBSで見たのか,レンタルビデオで借りたのか覚えていないのですが,一度見て印象に残っていたアンドレイ・タルコフスキーの「惑星ソラリス」のブルーレイを購入しました。 美しい映像と,退屈までな長回し,印象的なセット。芸術の匂いのするSF映画でした。 この映画の雰囲気は非常に独特で,世界観に浸ることのできる作品だと思います(最初見たとき寝たような気もするけど)。 名作SFとされていますが,昔見たときには,なんとも言えない怖さを感じたことを覚えています。3人しかいないはずのステーションに現れる「お客」の存在が謎めいていたこと,「お客」の行動原理が意味不明であり,また人の姿形をしているけれども当初は明らかに人とは違う何かであることの異質さ(これは映像化されることにより原作よりもさらに強い印象を残しました),こうしたことから怖さを感じたのだと思います。また冒頭,ステーションに行く前の報告の件もこの不気味な雰囲気を醸し出す要素となっていたのでしょう。 物語の大筋は,スタニスワフ・レムの原作に沿って進みますが,最後の最後の流れが違い,タルコフスキーとレムの指向の違いがまざまざと浮き彫りになったと思います。レムの原作を読んだときには,存在するものは存在しているありのままの姿を見るよりなく,理解できないものは理解できない,だがそれでも・・・というような前向きな印象を受けたのですが,タルコフスキーの映画を見終わった後の印象は全く違いました。個人的にはレムの原作のスタンスの方が好きですが,映画を通してみると,タルコフスキー版のラストはこれがおさまりのよい形なのだろう,と思いました。 原作とはまた違った一つの芸術だと思います(映画自体は長尺ですが,おすすめ)。惑星ソラリス 新装版【Blu-ray】 [ ナタリア・ボンダルチュク ]