株式質
会社法では株券不発行が原則となりました。もちろん、発行することもできますが、株主名簿を利用すればわざわざ株券を発行する必要があんまりない、ということで改正になったと聞きます。 これによって若干変化が起ったのが、株式質。 債権質に関して、証券が存在する債権においては証券の交付が効力発生要件となっています。株式を質に入れるにおいても、これまでは株券の交付が求められていました。しかし、株券不発行が原則となったことからすると、株券を発行していない場合には質権を設定できなくなってしまうのではないか、とも思えてしまいます。この点、会社法はどのように規定し、株式質の要件はどのように考えられているのでしょうか? また、株式質の効力発生要件は、民法上の質権設定の例外として扱われることになるのでしょうか? 株式質については会社法146条ないし154条が規定しています。 これらの規定をまとめると以下の事が言えます。 1 株券発行会社においては株券を発行していることから、株式に質権を設定する場合には、株券を交付することが質権の効力発生要件となります(会社法146条2項、147条2項)。これは、略式質、登録質のいずれにも共通する必須の要件です。この場合、株券を継続して占有していることが対抗要件となります。 2 株券発行会社以外の会社では、株券を発行していないので株券の交付は効力発生要件とはなりません。当事者間の質権設定の合意に加えて、質権設定者である株主の請求によって会社が株主名簿に質権者の氏名・名称及び住所を記載・記録する方法で質権が設定されます。 3 株券発行会社以外の会社では、上記以外の方法で質権を設定することができないことから、必然的に、登録質しか存在せず、略式質は存在しないことになります。なお登録質と略式質の効果の違いは、会社法152条以下に詳しく記載されています。 そうしますと、結局の所、株券発行会社においては、質権を設定するためには株券を交付することにかわりはなく、「証券がある場合には証券を交付することが債権質の効力発生要件である」という原則に変化は無いことになります。他方で、株券を発行していない場合には「証券がない」ですので、交付が要件とはならない、他の証券不発行債権と同様の扱いになるわけですね。民法上の例外とはならないわけです。 って、わざわざ書くまでもないかな^^;