合資会社の有限責任社員
剣竜@事務所です。 日記書くのがめんどくさいので、つい先ほどまで調べていた事項をそのままはっつけたいと思います。 しかしそれにしても、前回が旧民法35条と現行商法52条2項の関係についてで、今回が合資会社の有限責任社員について・・・我ながらマニアックですなー。 合資会社の有限責任社員は、出資額の限度で責任を負います(商法157条1項)。 ここで注意を要するのは、合資会社が利益額を超えて有限責任社員に利益配当を行った場合、その有限責任社員は会社債権者に対して、利益額を限度として直接責任を負うとされていることです(商法157条2項)。 このことは、合資会社の有限責任社員が、直接有限責任を負うことを意味しています。出資額の限度で、なおかつ直接、会社債権者に対して責任を負わない株式会社・有限会社の社員が負う、間接有限責任とは異なるということですね(なお、新会社法で規定される合同会社の有限責任社員は、間接有限責任を負うことになっています。) 現行法下では、合資会社の有限責任社員は、責任形態だけではなく独特の権限を持ち、その扱いが他の会社社員とは異なる珍しい存在でした。 ただし、新法下ではその特殊性が若干弱まっています。 例えば、従来、合資会社においては、有限責任社員は、会社の業務執行権限を有せず、会社の代表権が認められませんでした。しかし新法下では、有限責任社員も、定款に別段の定めがある場合を除いて、会社の業務執行権限を有するようになりました(会社法590条2項)。また有限責任社員も業務を執行する社員となれば、会社を代表することもできるようになっています(会社法599条2項)。 他方で、これまで有限責任社員は業務執行権を有しない代わりに、特に無限責任社員とは異なった業務監視権が認められ、無限責任社員と差別化が図られていました。しかし、業務執行権を得たことにより、業務監視権は無限責任社員と同様の権限となり、差がなくなりました(会社法592条1項)。 むしろ、今後は、業務を執行する有限責任社員なのか、業務執行権を有しない有限責任社員なのか、という区別が重要になります。 業務を執行する有限責任社員は、競業避止義務を負い(会社法594条)、職務に関して第三者に損害を与えた場合に、株式会社における取締役のような損害賠償責任を負うことになっています。(会社法597条)。また、その持分を譲渡するにあたっては、無限責任社員の場合と同様、全社員の承諾が必要となります(会社法585条1項)。 これに対し、業務を執行しない有限責任社員は競業避止義務を負わず、業務に関わらない以上、上記のような損害賠償責任を負うことはありません。さらに、その持分を譲渡するにあたっては、業務を執行する役員全員の承諾があれば足り、他の業務を執行しない有限責任社員の承諾までは必要でないとされています(会社法585条2項)。 ただし、定款変更、解散、合併等重要事項については、業務を執行しない有限責任社員を含む総社員の同意が必要です(会社法637条等)。この最後の部分はこれまでと同様ですね。 こうした改正は、合資会社が合同会社と一緒に、持分会社として規定されているために、合同会社用の規定に合資会社の社員を合わせたからですね。 それでも直接有限責任の規定は会社法にもありますので(623条)、相変わらずきらりと光る存在感を残しているのが、良い感じです^^