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カテゴリ:音叉 第2楽章
「暇なら読め」とこれまた暇でもないのに貸し与えられた(笑)山本一力の「あかね空」を読み終えた。
「蝉しぐれ」と同様、「あかね空」も時代物。 「なんで?どうしたの?最近江戸時代ブームでも来てるの?」と聞くと、どうやら彼も「暇なら読め」と誰かから云われて貸し与えられていたらしい。 当の本人が読む時間が無いので先にこっちに回ってきたという事だそうです・・・・。 今回は他にも数冊の本が一緒に手渡され、かの「蛇にピアス」や「蹴りたい背中」などが後に控えています。 僕、読書人並みに好きですが、結構読む本に偏りがあるの。 なので、本来の持ち主さんの江戸→超現代の飛躍には驚いたです。 江戸深川に、京都から上京したての若者が、老舗の豆腐屋から暖簾分けを許されて店を構えるところからお話は始まります。 店構えを整えるまでの慌しさや、始めてから暫く夜毎に訪れる不安。 売り上げが安定するまで繰り返す焦燥感。 江戸前の粗雑で固い豆腐の味に馴染んでいる町人は、彼の上品で丁寧なつくりの豆腐の良さが判りません。 初日こそ、ご祝儀と試食を兼ねて豆腐を購入してくれたものの、それからは全く売れない日が続きます。 しかし彼は頑なに自分の味を変えることはせず、自分の腕へのプライドと、それを鍛えてくれた老舗の味の確かさを信じて毎日店を開けます。 苦難の日々は続きますが、お嫁さんや深川下町の町内の人たちの、彼の頑固さを心配しつつも甘やかす事無く必要な世話は進んで焼くという気質に囲まれ、話は明るい日差しの中を進みます。 やがて、彼の誠実な人柄と確かな味は、努力と人情の助けに寄って近辺の寺院や料亭に買われ始めます。 そして、最終的には大きな店を構えるところに到達する・・・・・一種のサクセスストーリーにもなっています。 「にもなっている」と書いたのは、実はこれがテーマだと想って読み進んでいたのですが、成功に至るまでで本の全体の1/2しか到達していません。 個人的には、この、前半の、「貧乏でも苦労していても前向きな主人公とその妻のお話の部」をとても面白く読みました。 整形外科での助手を経て、独立を目指した「先生」が物件を探したり治療室の施設をひとつひとつ揃えて行く過程。 開業日の意気込んだ様子や、開業暫くの患者さんの殆ど来ない数日。小さな事件に遭遇して肩を落とした日。 患者さんが増え始め、安定期に入り暫く後に治療院をこれまでより構えの大きなところへ移して、そして、10年余を過ぎ・・・・・・・・・・・・。 「暇なら読め」と云った彼にも同じ様な日々があったのを思い出します。 さて。残りの半分。 ここからは、跡取りとなる子供たちの成長を追いながらの話になります。 しかしそれが「渡る世間(観てないですが)」並の複雑な愛憎劇となっていくのです。 ちょっとしたすれ違いが恐くて切ない展開の目白押しを招き、余りにも酷過ぎではないのか?という程の悪い展開へなだれ込み、最後の最後の最後の数ページで下町人情の力で片が付くというもの。 全てを読み終えた時は、これって「指南書」だったのかなぁ?むむう・・・と唸ってしまいました。 そうそう。豆腐売りの敵手のお兄さん。 こりゃぁーいい奴だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 23, 2004 01:02:08 AM
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