カテゴリ:ボーイズ・ラブ
そう、彼は恋にとても臆病な人だったんです。
彼が臆病にならざるを得なかった理由・・それは壮絶な過去の事件にあった。 『臆病な恋人』火崎勇/史堂櫂 プリズム文庫 2007年10月23日発行 イラストからもタイトルからも、ほのぼの恋愛系を想像していましたが、予想を裏切られました。 佐伯には、その清々しい外見からは想像できない、辛い過去があったのです。 佐伯が自分を男しか愛せない性癖だと気がついたのは、高校の時でした。 大学を卒業し、就職した佐伯は、大学時代の二つ上の先輩・新村と仕事先で偶然再会した。 新村は学生時代から憧れ続けていた人だった。 そんな新村から、まさかの告白を受け、付き合いだした二人・・佐伯は幸福だった。 しかし・・佐伯は新村から裏切られる・・。 新村は既に結婚していたのだ! それを知ったのは、佐伯の存在を知った奥さんからの電話だった。 『ドロボウ』『変態』『人として最低だ』と罵り、手紙や嫌がらせも続いた。 そして彼女は突然に佐伯の前に現れ、佐伯を刺して、自殺した・・。 そんな佐伯に追い打ちをかけるような新村の一言・・ 「お前のせいだ・・お前が俺を誘うから・・全部お前が悪いんだ!」 全てを失った新村は佐伯を責めた。 全てを失ったのは新村だけではない・・佐伯も転職と引越しを余儀なくされ、何より心身ともに深い傷を負ったのであった。 辛い過去とは聞いていたけど・・こんな重い過去だったなんて・・。 佐伯は転職して、『昼寝屋』という時間単位で部屋を提供するお店の店長をしていた。 佐伯は、昼食に通う料理屋でいつも居合わせる鹿沼という男が気になって仕方がない。 鹿沼は二人の女性と同時につき合うような最低の男だった・・。 そして、その鹿沼は『昼寝屋』の常連さんでもあった。 ある日、「シャワーが壊れたから見て欲しい。」と鹿沼から電話を受けた佐伯は、部屋を訪れた。 しかし・・それは嘘で、佐伯は突然鹿沼から「好きだ」と口説かれる。 鹿沼が気になってはいても、過去のトラウマから恋愛を拒む佐伯は、鹿沼を突っぱねる。 ましてや・・二股をかけるような男は尚更である。 何度断られても鹿沼はあきらめなかった・・。 そして・・鹿沼は佐伯が思うような不実な男ではなかったのだ。 鹿沼が会っていた女性二人は、鹿沼が経営するジュエリーサロンの店長だった。 過去を告白した佐伯に「俺はお前を傷つけない」と言ってくれた鹿沼・・二人は過去を乗り越え結ばれた・・はずだった。 しかしっ!佐伯は、街で偶然新村と会ってしまう! あんな仕打ちをしておきながら、新村は佐伯によりを戻そうと、しつこく迫る。 なぜか佐伯は、新村を完全に拒めない・・・。 ああん、もう! なんできっぱり撥ねつけられないのっ! 私は、そういう煮え切らないでウジウジしているのが嫌い! 新村は佐伯を誘い出し、その場に鹿沼を呼んだ。 鹿沼にダメージを与えようとしたのだが、鹿沼は「別れた恋人同士の話し合いなら当事者だけでやってくれ」と、佐伯を置き去りにして帰ってしまう。 鹿沼を失う恐怖から、佐伯はキレた! ・・なら初めからキレろよっ! 新村の腕を振り払うと、佐伯は捨てゼリフを残して、鹿沼を追った・・。 たとえ捨てられても・・いらないと言われても・・失いたくない・・。 こんな気持ちを教えてくれたのは鹿沼だった。 でも・・恋に臆病だったのは佐伯だけではなく、鹿沼もそうだったのだと最後に分かる。 ここに登場する、女性陣が面白いっ! 鹿沼の部下の宮沢さんや、佐伯の部下の久本さんは、二人の仲に気づいているはず。 何だか心強い二人です。(笑) 私の満足度★★★☆☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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