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最近、面白い小説に当たらなくて困っていましたが、これは良かったなぁ。
『半化粧の恋』鳩村衣杏/高座朗 ガッシュ文庫 2009年2月10日発行 病気の父親と家族を養うため魚屋に奉公に出て3年、景は縁あって貿易商を営む旧家・堂島家の住み込みとして働けることになった・・時は明治44年、景が15歳の年であった。 その堂島家の長男・充洋は景の3つ上の18歳、頭脳明晰で心も広く優しい青年で、やがてこの国を統べるであろうと思われる方だった。 景は立派な旦那様と綺麗な奥様、そしてこの坊ちゃまが暮らす家で働けると思うと誇らしさを感じるほど幸せだった。 全てが幸運だと思えた矢先、景は奥様の留守中に旦那様に呼ばれる。 旦那様は可愛い少年が好みで、そのために景は雇われたのだと知った・・事実を知り愕然とする景・・、景は一気に奈落の底に突き落とされた。 そんな景を支えているのは、抱かれる度にくれるお金で家族へ十分な仕送りができることと、充洋坊ちゃまをお慕いする気持ちだけだった。 決して手の届かない存在の充洋様、でもただ充洋様に仕えたかった・・出世し、結婚し、幸福な人生を歩む充洋様をお側で見ていたかった・・それが自分の、この世に生を受けた意味だと思いたかった。 しかし、旦那様に抱かれていることを充洋に知られてしまう 軽蔑されると思った景だったが、充洋は父親のことを謝り、自分は何もしてやれない・・と自分を責める。 充洋は医学の道に進んでいたが、景が勉強して知識を得てどんどん変わっていく様を見て、教師になりたいと思うのだった。 ある晩起こった、堂島邸の火事が二人の運命を変えてしまう。 その火事で旦那様と奥様は亡くなり、景も左半身にひどい火傷を負ってしまった。 痛みで朦朧とする景に知らされたのは、充洋が火をつけ両親を殺したという事実だった・・。 それから10年、充洋が服役し、出所するのを景は待っていた。 景はもうあの頃の景ではない・・侠客、佐賀屋の博徒『半化粧の景』と呼ばれ、その道で名の知れたヤクザになっていた。 美しい景の白い肌についた半身を覆う紅い火傷の痕、女も羨む容姿と裏腹な、胆の据わった男気の対照的な姿に、誰が呼んだのか?「片白草」と呼ばれるどくだみの一種・・半化粧をなぞらえた名だった。 充洋は身を落とし任侠の道に入り、景の弟分となって主従が逆転してしまう。 ああ、何という運命の悪戯・・。 しかし、やくざな世界に身を置いても、景の心は綺麗なままだった・・景にとって充洋は永遠に充洋坊ちゃまだった。 二人の互いを想う気持の美しいこと~、ああ・・泣けますぜっ! そして最後にびっくりの展開が あの関東大震災が、また二人の運命を変える お~っ、そうきたか~、思わず私はうなってしまいましたよ。 私の満足度★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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