カテゴリ:ボーイズ・ラブ
わけあり人生、それ故の苦しい恋愛・・、事故や病が、事件が、主人公をさらに苦しめる・・これは、切ない小説を描かせたらピカ一の、えれな節の王道です。
最近の傾向として、生やさしいBL?では物足りなくなってきている私は、更なる刺激を求め、ハードなものや救われないほどの切ないBL?(どんなBLやねん)を求めてしまいます。(笑) 今回のえれなさんの小説はちょっと倒錯的で耽美っぽく、かなり気に入ってしまいました。 『欲望と純潔のオマージュ』華藤えれな/三雲アズ ダリア文庫 2009年8月20日発行 著名な陶芸家だった蒼史の母は、イタリアからの留学生と恋に堕ち、蒼史を身ごもったが、相手にとってはただの遊びで、逃げるようにして帰国してしまった。 母はそのショックから精神を病み、数百年続いた京都の古い伝統工芸の家系にとっても、私生児の蒼史の存在は忌むべきものだった。 蒼史は自分の中に流れる外国人の血を隠すため前髪を伸ばし、目立たぬように生きてきた。 そして日本人としての自分を意識したくて、日本語教師の資格も取った。 精神を病んだ母は、息子に異常なまでの愛情を見せ、蒼史の自由を奪う。 祖父からは芸術の才能がないとされ、祖父が学長を務める芸大の学生課で働く蒼史・・・今の蒼史は生きているようで実は生きていない・・亡骸だったのだ。 そんな蒼史の前に現れた、チェコからの留学生・カレル・・彼は若き天才彫刻家で、日本の彫刻や彫金を勉強するために蒼史の大学にやって来ていたのだった。 カレルは蒼史の美しく不思議な存在感に惹かれ、二人は恋に堕ち、チェコに一緒に行く約束をする。 しかし、カレルの帰国当日、蒼史は来なかったのだ・・。 カレルを裏切ることになってしまった事件とは・・?! 今の蒼史に残る、左脚の大きな傷痕は・・?! ここから先はかなりネタバレになりますのでご注意下さい。 カレルを裏切るような別れ方をしてから4年後、蒼史はカレルの住むプラハに来ていた。 パリの芸術祭でグランプリを受賞したカレルの個展が、彼の住むプラハで開かれていることを知り、その作品と彼の故郷をこの目で記憶に焼き付けたいという一心からだった。 『美しき亡骸』と名付けられたその彫刻は、カレルの本来の作風である、躍動感あふれる「生」が感じられない異質な作品だった・・・そして、その姿はまさに自分・・蒼史の姿だったのである。 そしてそこで二人は偶然再会してしまう! 蒼史の裏切りは、幼い頃から天才と呼ばれ挫折を知らない傲慢なカレルが初めて味わった挫折だった・・。 彼はそのショックからスランプに陥り、やっとの想いで立ち直り完成させた作品が『美しき亡骸』だったのに・・何故今になって目の前に現れたのか?! カレルは怒りで「償いのために何でもするから・・」と言う蒼史に、一カ月間彫刻のモデルになれと命令する。 しかし・・、蒼史の身体は病に蝕まれていたのだった。 一カ月という時間が、果たして自分に残されているのだろうか・・・? 蒼史は病を隠し、命がけでモデルになった。 もうすぐ、この世界から消えようとしている・・この顔と身体が、カレルによって作品として新たに創られてゆく・・そして自分の魂ごと、その器に入れて封じ込めて欲しいと切に願う・・。 ―きみの手でオレを美しい亡骸にして―《帯文》 うぉ~ん、うぉ~ん 最後まで蒼史が可哀想で、いじらしくて泣けました・・。 私の満足度★★★★★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ボーイズ・ラブ] カテゴリの最新記事
|
|