それは、憎しみなのか?愛なのか?
『ザイオンの小枝』稲荷家房之介
スーパービーボーイコミックス 2009年9月10日発行
あるユダヤ人の少年は、両親を亡くして悲しみに暮れていた。
それを伯爵少将は、引き取って育ててくれた。
いや、それは育てるというより・・支配したという方が正しいかも知れない・・。
伯爵の意のまま、軍医になった彼は、命令に従って、同胞を殺めてしまう。
伯爵は彼にとって、冷酷で、尊大で、美しく、空虚な、神と言える存在だった。
そして、ドイツは連合国に対し、無条件降伏し、業火の中、自害しようとした伯爵を彼は救い出したのである。
彼は、伯爵を匿い、監禁し、凌辱し続けた。
それは果たして、復讐なのか?
おそらく、彼にも分からない非常に屈折した愛情なのでしょう。
彼は、ふと幼い時に伯爵と暮らした冬の別邸を思い出します。
支配され、心身ともに傷つけられ、痛みや憎しみばかり感じていた日々・・でも、伯爵はいつも彼のことを考えていてくれた・・。
自ら食事も拒否し続け、弱ってゆく伯爵・・、青年の目からいつしか涙が零れる。
朦朧とする意識の中、過去と記憶が混濁している伯爵は、初めて彼の名を呼びます。
「エリア、また泣いていたのか・・さっきは強く打ってしまって悪かった。」
やはり、二人の間には深い愛情があったのだ・・。
そして、稲荷家房之介さんお得意の『肉球編』!!
その後の二人を描いた、描き下ろしも掲載!
表題の他、『Chrysalis』『熱の檻』『Paldias』も入った“おやじ特集”です。
そうです、おやじです。(笑)
おやじのオンパレードと知らずに買ったものですから、おやじがちょっと苦手な私には辛いものがありました・・。
『Chrysalis』以外は、全部ナチスドイツ時代がテーマになっています。
おやじ受けでハード、ちょっと分かりにくい感じで、最初はもうギブしたくなりましたよ。(笑)
我慢して?もう一度読むと見えてくるものがあり、もう一度・・もう一度と、繰り返し読み、じっくり味わった作品でした。