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志(kokorozashi)

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2020年12月19日
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カテゴリ:学び
2回目。5000字の文章を書いてみました。
この内容は、とあるライティング講座の課題テーマに即したものです。
テーマは、「マフラー」です。
私の提出課題を書き残したく、掲載いたします。
2回目の5000字も、大変時間が掛かりました。
まだまだ書けないことがわかりました。
訓練が足りません。書くことが訓練です。
日々、訓練を続けることで何かが見えてくると
期待しています。
以下、提出課題の内容
--------------------------------------------------------------------
「もらった作品どうしていますか?」
昭和40年代。
私の母親は24歳の時に4歳年上の父親と結婚した。
父親は瀬戸内海に浮かぶ諸島で育ち、中学校を卒業すると同時に、
集団就職で大阪へ出稼ぎにきた。
お見合い結婚をした後、普通の生活がはじまった。
鉄工所を転々として働く父親と家計を切り盛りしていた。
低所得者の部類で贅沢をせず、無駄なモノは買わずに物を大切にする生活は、
収入は少なくても、不自由なく、過ごすことができた。
ペーパークラフト、折り紙、裁縫が趣味でした。
その中に、編み物も含まれていた。
家にはミシンと編み機があった。ミシンは電動のような便利なものではない。
箪笥のように丈夫な木箱に収納された、足でペダルを踏んで動かすものだった。
母親に教えてもらって雑巾をつくったことがあるのでよく覚えている。
今、振り返ると内職をしていたのである。
いつも手を動かしていた記憶がある。
どこの家庭でも内職をしている時代であった。
私には2歳年上の姉がいる。
姉も子どもの頃に母親から編み物を教わって、帽子や小物を編んでいた。
姉の性格は、強気で負けず嫌い。
やると決めたらとことん突き詰めるタイプの性格である。
高校生になり、思い出したかのように部屋にこもって編み物をするようになった。
おそらく、彼氏でもできたのだろう。
彼氏へのプレゼントとして、編み物をしていたのだと察する。
セーターや手袋を編んでいた。
途中で投げ出したところを見たことがない。
ここでも強気の性格が活きていた。
私は当然に編み物をしたことはない。
子どもの頃、母親に作ってもらった手編みのセーターは、
3着あった。正確には、セーターが1着とベストが2着。
どれだけの時間と労力と費用が掛かっているのかを把握してはいない。
相当な根気がないと作れないことは理解できた。
たくさんの愛情が含まれていることは確だった。
作ってもらった方は、嬉しい限りである。
誰も持っていない世界に1つしかないセーターである。
見た目で誰もがわかる手編みのセーターは自慢でもあった。
手づくりの品物は捨てられない。
愛情や気持ちがこもった作品であるからだ。
サイズが合わなくなったり、デザインに飽きたりすると着なくなる。
着なくなったセーターは長期間、タンスの中で眠っていた。
時々、父親が着たり、母親が自分で着ることもあった。着まわした。
モノを大切にすることは、習慣を越えて自然になっていた。
貧乏だったから普通だった。
着なくなったセーターは、捨てずにほどかれた。
クルクル、クルクルと巻き取られて、元の毛糸の塊となった。
毛糸の再利用である。
私は、普段の生活から物を大切にすること。
お金を稼ぐことの大変さを知り、両親の背中から客観的に学んでいた。
大学時代に仲良くなった女性がいた。
3つ年下のそろばんが得意な真面目な子だった。
当時はバブル経済の真っ只中であり、若者たちの多くは、
高級ブランドの服や小物を身に着け、高級車で通学する学生もいた。
裕福に過ごしていた。勉学よりも稼ぐほうに時間を注いでいた時代だった。
当たり前のようにアルバイトで得た収入は、自分の小遣いとなり、
時間を費やせば費やすほどに稼げる時代だった。
私の身近にいる学生は裕福で華やかな人が多かった。
毎日違う服。高価なブランドバック。車やオートバイ。
日々、クラスの中で弾む話題は自慢大会のようであった。
一方の私は貧乏学生で、自慢大会には参加できずにいた。クラスに溶け込めずにいた。
溶け込む必要もなかった。同じである必要もないし時間の無駄だと理解していたからどうでもよかった。
アルバイトで稼いだ収入は、学費と自身の生活費に消えた。周辺にいる学生と同じようにはいかなかった。
内面が薄っぺらい私は、自慢するようなものはなく、みすぼらしい外見には劣等感を感じていた。
贅沢とは無縁で、身の丈にあった生活を続けた。
勉学とアルバイトを繰り返すことが、時間の使い方であった。
劣等感は人と同じことを避け、自分形成に役立った。
そんな私を認めてくれたのが彼女だった。
彼女も、私と同じような生活感で毎日を過ごしていた。
同じ価値観を互いに認め合い、気が合った。地味で真面目な田舎者でした。
12月29日。年末の押し迫る寒さが厳しい日だった。
彼女に誕生日の贈り物をもらった。
忘れもしない24歳の誕生日のことだった。
彼女が編んだ手づくりのマフラーだった。
編み物をすることを聞いたことはなく、正直に嬉しかった。
私のために編んでくれたことを思うと、喜びは倍増した。
貰った方は、嬉しさもひときわである。
これ以上のものはないし、大切に使う。
気の知れた仲間にも自慢したくなる。
街を歩いている時にも、手編みであること見せつけているかのように
自慢気な気持ちであった。
私には、バーバリーのマフラーよりも、ラルフローレンのマフラーよりも価値あるものだった。
友達の前でも、さりげなく愛用した。
彼女とのデートの時には身につけていく。
時には、1本のマフラーを肩寄せ合って二人で使うこともある。
ラブラブモードで活用するのである。
マフラーは、カップルの熱を二倍にする効果をもたらす。
温かみは、甘い思い出になった。
当時、首もとの防寒対策として利用していたものは、ネックウォーマーでした。
体育会系の私は、スポーツのアイテムをそのまま使っていた格好だった。
寒さ対策としては、首が温かいだけで寒さを感じる度合いは全然違った。
服装には気を配ってはいたものの、お洒落にマフラーをつけるほどには至っていなかった。
マフラーは防寒対策の用途以外にも使われている。
ファッション。生地や素材、色によるデザイン、かたち、健康。
巻き方にもこだわりがある。
私は、マフラーを意識してつけたことのなかったため、巻き方、着け方を研究した。
当時は、インターネットのない時代。姉や知人に教えてもらった。
マフラーの巻き方には、多くの種類があった。
その長方形の形状から、結ぶかたちでの巻き方が多いのが特徴だった。
二重に巻く巻き方。二重巻きはマフラーを半分に折り、幅を半分にして、中心を首の正面に持っていき、一度後ろで交差させて、前に持ってくる。最後にマフラーの端を結び、形を整えたら完成する。一番簡単な方法だった。最後の結び目は、正面だけではなく、横にしてみたり、後ろにすることで楽しむこともできた。
またネクタイのような巻き方をしたりもした。
考えてみるとマフラーの結び方は自由で、自分に合った結び方を見つければよかった。
ただ、巻いているだけではダサいことに気がつき、格好よく見せる巻き方を考えるきっかけとなった。
使い方を工夫することで、身体の冷えや肩こりにも効果があり、
健康の面にも役立てることができた。
首元が暖まると、身体に入ってくる冷気を防ぐことができ、保温効果も実感できる。
ただ首からぶら下げているだけの使い方は、見ていて残念な気持ちになった。
手編みのマフラーの場合、デザインは編み方が大きく影響する。
一般的には、棒針編みで編まれたものが多い。棒針編みは、二本の棒を使用して編む。
棒針編みとをかぎ針編みとを比較すると、棒針編みは伸縮性に優れていて、弾力も強く柔らかい仕上がりになるのが特徴である。棒針編みの編み方にも種類があり、それぞれ、メリヤス編み、ガーター編み、一目ゴム編み、二目ゴム編みなどがある。表面と裏面があるのが特徴で、目によって模様が異なってくる。その違いを利用して模様をつけるとデザインになる。組み合わせをすることもできる。またゴム編みは、その名の通りに、より伸縮性を増して編むことができるので、伸縮性を求めるのであれば、ゴム編みが優れている。
メリヤス編みは、表目と裏目で目の模様と伸縮が異なるため、両端が丸まってしまうことがある。アイロンのスチーム機能で真っすぐにすることは可能であるものの、マフラーには向かない編み方と言える。
ガーター編みは、表目と裏目を交互に編む編み方を言う。ガーター編みはメリヤス編みと異なり、丸まってしまうのを防ぐことができる。また表目と裏目を気にすることなく、ずっと表目だけで編むことが出来るので、簡単に編むことが可能である。
一目ゴム編みは、表目と裏目を交互に編むことにより、横方向に伸びる性質のデザインになる。
マフラーの編み方においては最も一般的な編み方。
特に男性へのプレゼントに関しては、単色でシンプルに仕上げることができるため重宝されている。
ファッションに合わせやすいマフラーを作ることができると言われている。
このように、メリヤス編みか一目ゴム編みがシンプルであるため、初心者でも編むことができる。
特にマフラーを編む場合は、一目ゴム編みがお勧めといえる。
また、毛糸を何種類かの色を使うことにより、印象を変えることもできる。
ボーダーにしたり、2色を交互に編んでも良いデザインができる。
比較対象のかぎ針編みの特徴はどうだろうか?
かぎ針編みは、その名の通りにかぎ針を使用した編み方である。
かぎ針とは、1本の棒の両先端がかぎ爪状になっている棒であり、毛糸がひっかかるように出来ている。
かぎ針編みは、太さが様々あり、太ければ太いほど目の粗い編み物ができる。
また、かぎ針編みは、棒針編みと比較すると、伸縮性は低い。
そのため、棒針編みよりは、繊細なデザインが可能であり、レースのような繊細なものも作れるのが特徴である。
かぎ針編みの編み方にも種類があり、方眼編み、細編み、長編み、レース編みなどの種類がある。
さらには、モチーフという編んだパーツを組み合わせて繋げて、ひとつのマフラーにする方法もある。
モチーフにたくさんの色を使用すれば、カラフルで鮮やかなマフラーが完成する。
方眼編みと長編みはシンプルであり、初心者向けの編み方である。
単色でひとつの色の毛糸を使用するだけで、比較的簡単にできる。
また、毛糸の種類、色、形状、太さなどの特徴を理解して、使い分けることで、味のある仕上がりになる。
単色でも豪華な印象を持つものにすることができる。
レース編みは、細かい模様が美しく、女性的な印象を与える美しいデザインになる。
特に細いモヘア素材の糸で編むと、体にフィットしやすい。
しっとりとしたデザインになり、軽やかな印象を得ることができる。
見た目は、難しそうに見えるものの、単純な編み方の繰り返しであるため、美しさを求める編み方の1つである。マフラーには向いていない編み方であると言える。
私が贈り物としてもらったマフラーは、ネイビー色の棒針編みで縄編みであった。
伸縮性は抜群で、ゆったりとした着け心地は気に入っていた。
このマフラーを利用して、2度の冬を過ごした。
大学生生活も終わりに近づいた3度目の冬に、二人の関係は終わりを迎えた。
お互いの家庭の事情がその理由であった。
仕方がなかったのであきらめも早かった。
この時はじめて、家庭の事情という言葉の意味をかじった。
学生の目線で、大人になることは大変だという意識が湧いた。
二人の関係が上手くいかずに失敗に終わったとき。
思い出の品の保管場所に困る。忘れるためである。
思いきって捨ててしまうのが一番すっきりしていい。
いただき物はみんなそうかもしれないものの、手づくりのものになると
特に重みを感じて捨てにくい。
彼女にもらったマフラーがその良い例だ。
彼女の気持ちのこもった作品であるからだ。
置いておくのも、未練がましいと思うものの
ふっきれない気持ちが残り、いつまでも捨てられない。
衣類であれば、見えない箪笥の中にしまう。使わないのに。
そうすれば、目につかないので自然と忘れるのでいい。
忘れた頃に、モノを探して目に飛び込んできたときは、目が醒める。
当時の温かみは、にがみに変わる。苦い思い出である。
身近な男性の中で、いや、今までの人生において、編み物を趣味とする男性を知らない。
編み物は、女性特有のものなのであろうか?
編み物は、時間を必要とする根気のいる作業。
大きなものになればなるほど、大変である。
完成品は、熱意や愛情がこもった作品であるとも言える。
世界にひとつしかない作品であるため、価値も高い。
贈りものになれば、最強である。これぞ、女の武器になる。
もらった男性は嬉しい。最高の品物になる。
ところが、困ることもある。
捨てられない…
相手のこと思って、多大な時間と労力を使って編んだ手編みのマフラー。
簡単には捨てられない。
使えば使うほどに、多くの想い出が詰まっていることが理由である。
思いきって捨てるのは良いが、使えるものは置いておきたい。
私の場合は、自身の生活環境から物を大切にすることがその理由である。
捨てる理由がないのである。
今も、ネイビー色の棒針編みで縄編みデザインのマフラーは箪笥のどこかに眠っている。
家族には内緒の作品である。
この先にも使う気はないものの、未練がましくとってあるのである。
あれから、約30年が過ぎようとしている。機会があれば、捨ててもいい気持ちになってきた。
しかし、実際にその作品を目にすると、見なかったことにして箪笥を閉じるかもしれない。
みなさんは、好きだった人にもらった作品はどうしていますか?
おわり
#志(kokorozashi)
#マフラー
#ライティング





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最終更新日  2020年12月24日 17時23分37秒
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