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2007.06.06
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カテゴリ:日常のこと
 午後から思い立って篠山の丹波古陶館に行く。丹波の古陶は気持ちの中でスリップウェアと並んで自分のやきものの大きな柱なのでいつでも何度でも見たいのだが日本でいちばん古丹波のあるこの館が車で一時間ほどの気軽に行ける場所にあることはありがたく幸せなことだと思う。古今東西うつくしいやきものはいろいろとあるし好きなものもいくらでもあるが八百年の歴史を重ねた古丹波のその時代時代の様々な姿のそれぞれに気持ちが魅かれるのだ。これほど長い歴史を重ねているのに嫌なものがほとんどないうえにとんでもなくよいものが各時代にあるという窯は日本でも多くない気がする。
 そういう訳で丹波のやきものはいろいろと手元にも置いて身近に暮らしてはいるが、特に室町時代以前の世評の高い立派な品は自分などの買い得るものではなく、年に何回かここを訪ねてゆっくり拝見しているのである。今回も多分半年ぶりくらいであったが入ってすぐ受付の方に「前野さまですね」と声を掛けられて驚いた。地方の街の小さな美術館とはいえ年間数千人は来客もあるだろうに年間の会員ではあるものの何も特別な客でもない自分の顔などどういうわけで覚えておられたのだろうとこれには面食らった。
 何度来ても丹波の古陶は素晴らしすぎて満足する。満足すると同時に自分の仕事の覚束なさも突きつけられているようで息苦しいような気持ちもする。ともかく夕方までゆっくり拝見してそのあと篠山の友人のところを訪ねた。玄関に掛けてあった大判の羊皮紙に書かれた古いグレゴリア聖歌の楽譜が素晴らしく立派で、子供もいたりしていろいろ大変だろうにと思うとそれでもうつくしいものを思い切って買った偉さには頭が下る気がする。最近の蒐集や仕事を見ながら話しする。なんともよい仕事ぶりで自分も頑張らねばと刺激を受ける。こういうことを書けばまた角も立つというものだが、友達や知り合いにもものつくりのひとは少なくないが、よい仕事をすることは誰にとっても難しいことでむしろよいもののほうが少ないというのは世間一般であれ交友関係であれ大差はない。古丹波やネウマ譜が立派なのはとてもかなわないと呑気に逃げを打つことも出来ないではないが、同時代におなじような事情の元で為された仕事が立派であればこれは自分もひときわ精進してやるしかないという気になる。思い切ってものは買わねばならない。できる限りの無理は乗り越えて仕事は精進しなければならない。





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Last updated  2007.06.07 14:53:06
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