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2007.07.12
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カテゴリ:日常のこと
 朝は早くからいったん東京駅へ向かいコインロッカーに荷物を入れてから乗り換えて新木場へ向かう。秋葉原は人も多く蒸し暑かったが海に近い新木場は風も吹いていくぶん過しやすいような気がする。新木場などという妙なところへわざわざ出掛けたわけは木材屋さんを見たかったからで、ただの木材屋さんや銘木屋さんは京都でもたくさんあるがここにはメイプルやスプルース、マホガニー、エボニーなどギターやヴァイオリンに使う楽器用材を扱うお店があったからなのである。今回マンドチェロを求めることが出来れば楽器を作るという機縁も遠のくが、そうでなければ自分のためのマンドチェロをいずれ作ってみようかとも思っているので一度品質や値段や品揃えを見ておきたかったのである。楽器を作るというのも唐突なようではあるが、楽器には10歳頃から親しんでもいたし実は大学に行く前にそれはまだやきものに出会う前のことだがヴァイオリン製作の道に進もうかという気持ちもあって話を聞きに製作家を訪ねたこともあるので自分にとってはそう気まぐれな思いつきというわけでもないのである。素材としての木も好きなので楽器用の木ばかりではなく栗や欅や栃や屋久杉やそれに神代杉や神代欅などまで様々な木が揃っているこのお店は眺めているだけでも楽しくいろいろとお話も聞きながらわりあい長居してしまった。

 昼前に京橋まで戻って数年ぶりの懐かしい人に会い丸の内のちょっと自分では行かないような上等そうなお店でお昼をご馳走になり、いろいろな話をしてから早稲田へ向かう。これは昨日民藝館でみた展覧会案内のポスターを見て知った「八重山古陶展」を見るためで急遽どうしても見逃せないと予定に組み込んだのだ。会場は新宿の早稲田大学敷地内にある會津八一記念博物館である。この展覧会は早稲田の丹尾安典教授と沖縄古美術を扱われる観宝堂の吉戸直さんと現地で窯跡を発掘された阿利直治さんの最新の研究成果の発表でもあり、今まであまり明らかにされていなかった分野だけに非常に重要な展覧会であると思う。沖縄陶に関心のある自分などにしても八重山古陶といってもパナリ焼などは知っていてもその全体像はよく知らなかったし、あの素晴らしい沖縄本島の陶器の亜種くらいにしか思っていなかったから、それが実に骨太で立派なまた特別なうつくしさを持つものだったのでこれには驚かされ非常に感激した。確かにこれは沖縄のやきものではあるがその造型にも独特の格調があり、また原料も違うのだろうし一概には言えないにしても窯の温度を上げて焼き切るのになかなか苦労したような感じがするものも多く、だからこそそこに籠められた力は大変なものだと想った。沖縄のやきものはよい仕事を選べば今出来のものでも日本本土のものとは桁違いの力量があるものも少なくなく、すこし時代を遡れば仕事はさらに素晴らしく頭が下るものばかりなのである。実際に自家でも沖縄のものは大好きなので随分いろいろと身近に置いて眺めまた使っているがどういうわけかこのページではあまり紹介したことがないように思うのでこれはまた日を改めて機会を作りたいと思っている。古いものの内でも1682年の壺屋に統合される以前の喜納、涌田、知花などの古窯のものはさらに質朴であり、今までは喜納や知花だと思われていたものも最近の研究では実際には八重山であることが明らかになったりして、研究者でない無責任な立場のぼくなどは素晴らしいものはみんな八重山などと言ってしまいたいような気持ちにさえなるほどに素晴らしいものものを見ることが出来た見ごたえのある会だった。よいものを見れば言葉を失い黙ってしまうかあるいは誰かに感激を伝えたくなってしまうかだが、ちょうどそこに思い掛けないことに日本民藝館の若い学芸員さんが休みをとって見に来られたのに出会ったので、昨日は展示会場で何か忙しそうに仕事をされていたのでご挨拶くらいしか出来なかったということもあり、ご迷惑かとは思いながらもこれ幸と捕まえてあれこれ話しかけてしまった。
 とは言えやはり今日も予定はぎっしりと詰まっていて、これも予想以上のなかなか充実した常設の方もざっと見て二時間足らずで神田へ向かう。早稲田といえば古い知り合いがかつて住んでいたところでいっしょに神楽坂から飯田橋まで散歩したのもいい想い出だが、また漱石の家があったあたりでもありちょっとゆっくり歩いてみたいと言う気もしたがこれもまたいつかということにせざるを得ない。

 神田の神保町は古書で有名だが小川町から駿河台あたりには多くの楽器屋さんが集まっている。今回の東京行きは昨日の柳宗悦邸の公開日と共に、もうひとつはこの内の一軒にマンドチェロがあると教わったのでさっそく連絡を入れて見に来たというのが目的だったのだが念願のKentucky KK-4 マンドチェロも実際に見て弾かせて頂けば発売当時の値段から想像していたよりも材もよくなく音の出方も腑に落ちなかったし、それにネックもごろんと太くて自分の手にはあまりに扱いにくいような気がしたのもありせっかくだったが見送ることにした。期待しすぎたのかもしれないが無理して支払うには躊躇われたのでほとんど連れて帰る気で出掛けてきたから残念だったが仕方がない。
 一応目星を付けて来た古いギターを扱うお店を数軒廻りマンドチェロがないか尋ねて廻るがやはりないので古いマーチンギターを見せてもらう。自分の経済ではギターに今支払える気はしないが、それでも同じほど出すならマンドチェロより断然こちらだよなと思えるような40年代や50年代のよく鳴るO-18などいくらもあって弾いて魅かれる。古い楽器には特有の反応のよさと鳴り方があって好きだ。御茶丿水の駅に着くまでには本当にたくさんのギターショップがありよいものを何台も触れて満足。これは結果からするとマンドチェロに未練を残さないためにも役に立ったような気がする。楽器なのでもちろん個体差はあるに決まっているがこうなった以上はもうKentuckyのマンドチェロは探さないで自作するか他を当たるかで考えるしかない。
 御茶丿水から東京駅へ向かいロッカーの荷物を出してそのまま北回りの山手線で新宿へ。新宿では少しその辺を歩き回ってみたが簡単な食事を済ませればもう持て余すほどの時間はなく西口から京都へ向かうバスに乗った。

 早稲田での「八重山古陶展」はすでに14日で終わってしまいましたが次は那覇と八重山にて展示されるようです。大和の人にとってはとんでもなく遠いのは事実ですがそれでもやきものに興味のある方はぜひ出掛けて行って御覧下さい。強く御薦めします。
・東京展 早稲田大学會津八一記念博物館 6.25~7.14
・那覇展 那覇市立壺屋焼物博物館 7.31~8.12
・石垣展 大濱信泉記念館 8.17~8.25





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Last updated  2007.08.01 05:14:08
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