カテゴリ:ちょっとしたこと
一瞬見た数字を正確に記憶するというテストでチンパンジーの子供が人間の大学生や大人のチンパンジーを上回る成績を記録したというニュースを見た。この実験をやった京都大学霊長類研究所の松沢哲郎教授が「人間が一番賢いと素朴に信じている方が多いと思うんですけれども、それについて言えば非常にはっきりと、そうではないと示したことになると思います」と言うふうなコメントをしていた。
これは自分のような門外漢にも興味深い実験結果であるし、また大変意義のある研究ではあることとは思う。チンパンジーは利口な動物だとしばしば言われるが実際にその能力についてはよく知らなかったので、このニュース映像を見て記憶力以前に数字を図像としてはもちろんその大小の順列まで認識していることにも驚いた。この実験のチンパンジーは随分訓練されたチンパンジーだそうで、だからこそ人間と比べてどうこう言うならば同じように幼少からこういう実験に特化した訓練を受けた人間と比べないでは結論は出ないのではないかという気はした。 ただしこのニュースを見て自分が気になったのはそこではなく松沢教授の発言内容である。記憶力、視力、嗅覚、脚力など人間も含めてそれぞれの動物に得手不得手があるのはあたりまえのことで、だからこそ何も人間がチンパンジーよりも頭が良いと言い張ろうとも思わないが、こういう簡単な実験で認識や記憶の一面のみを比べてこういう軽率なコメントをすることが妥当であるとは思えない。この放映されたコメントももちろん会見でのもう少しは丁寧な説明の抜粋であろうし、また論文などのように学問として正式なものではないのはわかるが、それでもこれではチンパンジーの子供が人間より賢いという主張であるととられても仕方がない、好意的に解釈してもそういう脇の甘さがあると思う。 これでは京都大学という権威ある立場を背負って印象操作をしていると取られても仕方がないのではないか。言葉じりを捉えてその本意を汲むことなく批判するのは好きではないからこの発言の背景にそういう悪意があるとも、またこれが影響力という点を除けば特に罪深いものだとも思わないが原爆は仕方がなかったと発言した政治家やテラ豚丼を職場で作ってネットに投稿してしまった牛丼チェーンの店員と大差のない軽率さで、あまりにこれでは研究者としてお粗末ではないかと思えてならない。教授は思慮がたりないという意味で頭が悪いのを自ら証明しているようなものであり、チンパンジーの子供ならこのような軽率な発言をテレビですることはないだろうから、これは一回りしてやはり教授の主張を自ら実証しているのかなと勘ぐりたくもなる。自分たち一般人としては知の専門家である大学教授ともあろう立場の人には何もチンパンジー並の記憶力を求めはしないがもう少し総合的な意味で知的であることを期待してしまうのは無理はないことではないか。 参)京都大学霊長類研究所 http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/koudou-shinkei/shikou/chimphome/video/video_library/project/projectj.html ちなみに同研究所のサイトではさすがにこのようなおかしな表現は見当たりません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.12.05 00:22:27
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