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キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

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キータン.

キータン.

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2008.03.30
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カテゴリ:流されゆく日々



     桜む-6.jpg

昨日、街に出た。落語の小さなライブを聞いた後、家路をたどった。
土曜日のためか、バスの中はすいていた。
左側の席に座って窓の外をぼんやりと眺めていた。

城址公園が茜色に染まっていた。

「ああ、穏やかな光景だな。いいよな、春真っ盛りだ」

お堀端の桜の下で、大勢の人たちが花見をしていた。
紫色の煙があちらこちらで昇っていた。

「みんな元気で春を迎えられた。良かったね」

私は素直に頷いて幸せそのものの風景を見つめていた。

帰ってから、急に具合が悪くなった。
具合が悪い、そう心配する必要はない。
食欲はあるし、熱もないし、抗ガン剤の影響か、ただだるいだけだ。

「早めに寝る」

風呂にも入らず、酒も呑まずに、七時にベッドに潜り込んだ。

深夜に目を覚ました。午前一時だ。
おお、雨が降っている。日中あんなに良い天気だったのにな。

ベッド傍の小さな窓から外を眺めた。

一本の桜の木が雨に濡れていた。
夕陽を浴びてきれいに咲いていた花が濡れている。

あの桜の木の今年の春は終わったのだろうか。

一本の街灯に照らされて、心細げに花を縮めている。

「今年も桜の花を見ることができた。
 来年の春も桜を見ることができるのだろうか。
 うん、来年はもっと元気になって桜の木の下で乾杯だ」

そう思うと、雨に濡れている桜が愛おしくなった。
とにもかくにも、私の春が過ぎてゆく。

私はいつまでも桜の木を見続けていた。


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Last updated  2008.03.30 10:06:19
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