楪一志「レゾンデートルの祈り」
レゾンデートルの祈り [ 楪 一志 ]<内容紹介より>あなたも、生きたくても生きられないのでしょうか」2035年、神奈川県・江ノ島の“ラストリゾート”。この場所で遠野眞白が出会う人は、誰もが「死にたい」と願っている。安楽死が合法化された日本。人命幇助者“アシスター”の眞白は、死に救いを求める人々と正面から向き合う。暗闇の奥底に微かな「生きたい」があると信じ、希望の光を照らしたい。もう二度と、あの日の後悔を繰り返さないために。苦しくても、生きる理由を見つめ直す。新鋭作家が紡ぎだす、切なくも温かい命の物語。安楽死が合法化された近未来の話。安楽死を望む必要資格要件を満たすREN申請者。難病、不治の病、脳死等が対象となり、本人家族が望むならその苦しみから解放してあげたい。そういうテーマの話なのかと思ったのですが、全く違いました。この人たちはRES(+αの要素がありますが、安楽死の必要条件を満たしている)。REN申請者は、精神的、肉体的苦痛等により安楽死を望み自ら要請した14歳以上の者(諸々の制限はある)。安楽死が可能になるまでには申請から、1年間で10回以上、人命幇助者<アシスター>との面談を要する。申請は生涯で一度限り。途中で気持ちが変わり申請を取り下げても、その後の人生で再度安楽死を願っても認められない。申請者が後の人生においても納得のいく安楽死回避に努めるのがアシスター。主人公はアシスター養成専門学校を卒業したばかりの、新米アシスター。彼女の担当する申請者たちの心の内、背景と向き合い寄り添う姿が描かれています。自ら死を望む理由は人それぞれ。他人からすれば、些細なことかもしれない。申請者本人ですら、本当の理由がわからないこともある。「死にたい」わけではなく、「生きていたくない」。数年前にSNSで話題になったというのが何となくわかるような。重いテーマであるのに、作風は静かで凪(舞台が江の島だからというわけではないよね)とでもいうのか。それとも、毎度言っているような気がするけれど、年々、感動することが薄れている私自身のせいなのか。個人的には、ちょっとほわんとした温かい気持ちになりたい時に読む本に入ります。「ママが読む本て結構ドロドロしているよねー、ちょっとタイプが違うんだよなー」と言われるのだけれど、娘が読んだらぐっとくるのかもしれない。とは言うものの、続編があるらしく、本作に出てきたREN申請者が主人公のようで、ちょっと気になる。