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カテゴリ:読書
菊池寛 真珠夫人 ≪内容紹介より≫ 真珠のように美しく気高い、男爵の娘・瑠璃子は、子爵の息子・直也と潔い交際をしていた。が、家の借金と名誉のため、成金である勝平の妻に。体を許さぬうちに勝平も死に、未亡人となった瑠璃子。サロンに集う男たちを弄び、孔雀のように嫣然と微笑む妖婦と化した彼女の心の内とは。話題騒然のTVドラマの原作。 大正9年に新聞連載小説として発表され、新しい女性の生き方を描いて話題になったそうです。 それを裏付けるように、何度も映像化されています。 そう、大分前に、一種社会現象のようになった同名昼ドラの原作ですね。 私はドロドロ愛憎劇のドラマが好きではないし、ほとんど見ていませんが、 「たわしコロッケ」という言葉が流行ったことを覚えています。 というものの、ドラマは時代設定も異なるようですし、 登場人物も異なれば、後半は全く異なる展開だったみたいですが。 青空文庫になっているので、そのうち読もうとKindleに入れていました。 読む本が途切れた時に、電車の中で少しずつ読んでいたのですが、 初めのうちは旧仮名遣いで読みにくく、なかなか進みませんでした。 それが、主人公:瑠璃子が敵の荘田に嫁ぐことを決めたあたりから、ぐっと面白くなりました。 大正の時代に、理不尽な運命にただ打ちひしがれるのではなく、 己の運命を滅茶苦茶にした成金男に独自の生き方を持って仕返しをしようとした瑠璃子。 若き未亡人となった後は、その対象となったのは己に群がってくる男たち。 彼女の美しさと教養の深さ、奔放な様に夢中になっていく男たちを 指先ひとつでどうとでも好きなようにあしらう瑠璃子。 恋愛ゲームを楽しもうという者もあれば、本気で慕い軽くかわされ、 打ちのめされ命を絶つ者もある。 しかし瑠璃子はそんなことは歯牙にもかけない。 男がしていいことは女も同等にしてよいのだ。 男が女を弄んでいるではないか。 妾を囲っても、娼婦で遊んでも、それは当然のことのようにとらえているではないか。 それなのに、男を惑わす女は妖婦だというのは、男の我儘だ。 女も男を弄んで良いのだ。というようなことが彼女の言い分。 確かに今の時代ならば、男女平等で当然の考え方だけれど、 発表当時は、さぞ斬新な女性像だったことでしょう。 これを読んで腹を立てた男性、目からうろこが落ちた女性達が大勢いただろうと思います。 しかし、憎い夫の実娘であり瑠璃子の義娘 美奈子への深い愛情は 紛れもない母としての、家族としての愛情であり、 妖艶に振る舞っていてもなお、初恋の男性 直也へ操を立て、思い続けた姿は、 純情で貞淑な乙女の心そのものに違いありません。 だからこそ、きっと多くの人に受け入れられた物語なのだと思います。 まあ、ベタな感じもしますが(^^; それから、文中で瑠璃子のサロンに集まる男性たちが、文学論を戦わせるシーンがあります。 ここもなかなか興味深いです。 とても面白かったので、是非お薦めしたいところですが、 無料とは言え、いかにせん旧仮名遣いは読みにくいです。 新仮名遣い版も出ているようですので、そちらを読んだ方が良いかも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.06.03 00:09:32
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