男役 [ 中山可穂 ]
≪内容紹介より≫
トップになって二日目に舞台事故で亡くなった50年前の伝説の男役スター・扇乙矢。以後、大劇場の奈落に棲みつく宝塚の守護神ファントムさんとして語り継がれてきた。大劇場では月組トップスター如月すみれのサヨナラ公演の幕が開き、その新人公演の主役に大抜擢された永遠ひかるの前にあらわれた奇跡とはー。男役という稀有な芸への熱いオマージュを込めて中山可穂が情感豊かに描く、悲しく切ない恋愛幻想譚。
この著者の作品を初めて読みました。
この本を読んで共感して涙なしに読めなかった。
とインスタで紹介されていたOGジェンヌさんがいました。
それくらい現実の宝塚の世界と重なるというのか忠実なところがあるのでしょう。
温い一ファンとして楽しんでいる私には、どこが本当でどこが脚色なのか区別がつかない。
それともほとんど脚色なんてない?
そんなことはないか。
大劇場のファントムさんと呼ばれる故・扇乙矢の悲惨な事故
「セビリアの赤い月」のストーリー
あのこと?あの作品と被るよね、と読みながら頭を巡ることが多々あり。
二世、三世ジェンヌであるが故の辛さ
下級生抜擢に伴う上級生たちの反感
トップスターになるために犠牲にしてきた多くのこと
それ故にトップスターにしか分からない孤独
舞台、相手役に対する深い思い
昇華するまで終わらない、そこまで求めた男役は男役でしかいられない
男役以外の何者にもなれない
一般人には想像の域であった、ある種聖域とも言える部分を
物語であったとしても生々しく描いた作品でした。
読んでいる間は物語に引き込まれて、都度都度涙がこぼれたり、
思いもかけずぷっと噴出したりもしました。
読み終えて少し落ち着いたら、考えてしまいました。
私が過去に大好きだったトップさん、そして今大好きなジェンヌさんも
同じようなことを多かれ少なかれ経験しているのだろうかと。