閉鎖病棟(新潮文庫)【電子書籍】[ 帚木蓬生 ]
<内容紹介より>
とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった……。彼を犯行へと駆り立てたものは何か? その理由を知る者たちはーー。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。
以前にも一度読みかけたことがあったのだけれど、途中で止まってしまった作品。
改めて初めから読みました。
抱えるものが大きすぎる人々。
重苦しい話ではあるけれど、ラストに向けて明るい兆しを感じつつ読むことができました。
映画にもなっているので(見ていないけど)、なんとなく読みながら映画の配役の顔が浮かぶ。
小説で読むイメージと合わないのだけれど、映画は良かったのかな・・・?なんて思ったり。
「命の切り刻みが来る日も来る日も繰り返されると、いかにず太い人間でも参ってしまいます。
人の人生はひと続きにみえるからこそ安定しているので、これがはじめからこま切れになると、意味を失うのです。」
これは元死刑囚の秀丸さんが再度人を殺めた後に、友人チュウさんに宛てた手紙の一文。
死刑囚が登場する話で一番記憶に残っているのは加賀乙彦「宣告」。
毎朝、独居房の外で足跡がすると自分の部屋の前で止まるのではないか。
怖くて気が狂いそうになる。
その時間が無事に過ぎたら、あと24時間生き延びることが出来る。
それの繰り返し。
心を病んだ人が回復、再生していくことよりも、秀丸さんの言葉が一番深く心に残りました。