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テーマ:好きなクラシック(2326)
カテゴリ:クラシック音楽♪(パイプオルガンあり)
突然ですが、バッハ「トッカータとフーガ ニ短調」という曲をご存知でしょうか?
♪ラソラ~~・ソファミレド♯・レ~~ パイプオルガンの名曲と言われたら、まずこの出だしを思い浮かべる方も多いことでしょう。悲劇的なシーンによく使われる、眉間にしわ寄せてそうな深刻な響きですよね。 (もっともあまりに悲劇的すぎたのか、子供の頃とってもお下品な替え歌まで作られました……タララ~~・う○○がぼっとーん……どうもすみません!) さて楽譜では、最初の「ラソラ~~」の部分についてはキチンと書かれていません。正確には、ラの♪だけ出して、その上に装飾記号を付けているのです。この装飾記号は、山形のギザギザの真ん中に一本たて線をひいたもので、刺繍音(モルデント)と呼ばれています。 このモルデントが出てきた場合は、もとの音(ここではラ)を弾いたあとすぐ下の音にすばやく進み、パパッともとの音に戻すという演奏をします。つまり、「ラソラ~~」ですね。 この弾き方が、「布地に針を刺し、すぐまた表へ針を戻す行為」(池辺晋一郎『バッハの音符たち』より引用)に似ているため、刺繍音と呼ばれているワケなのです。言い得て妙ですね~! 池辺さんは上記の著作の中で、この「ラソラ~~」のモルデントの効果について、面白いことを述べていらっしゃいます。 以前記事にもしましたが、「音符たちはもともと落下する性質をもっている」ため、モルデントが出てきた場合、「ラソラ~~」の中で唯一落っこちている「ソ」は、なるべくもとの音(ラ)に戻りやすいよう、半音上がるのが普通なんだそうです。 ボールを床へ落とし、はねあがる様子をご想像下さい。床が遠いよりは近い方が、確実に跳ね上がって手に戻ってきますよね。 音符もこのボールと一緒で、「ラソラ」よりは「ラソ♯ラ」の方が、床が近くてすぐに帰ってこれるし、耳にも親しみやすい響きなんだそうです。が、あえて「ラソラ」にしているトコロに、この曲の強い意志が象徴されていると池辺さんはおっしゃっています。 「しかしバッハのモルデントは「ラソラ」と全音の幅。刺繍されたソは落下してしまいそう。 どっこい。それを持ち上げる。エイヤッと持ち上げる。 力が要る。 そう。その力こそ、この曲の意志。この曲の圧力感。この曲の豪放な世界。常識に従わなかった。そこがすごいところ」 音符の生理にさからわず、自然に流していた感のあるモーツァルトと比べ、この曲でのバッハは音符たちに対して王者の風格すらただよわせています。バッハは音符たちにけっこうムリさせてるよーなトコロもあるんですが、それが緊迫感を生み、深遠の響きを生み出している……のかもしれません。 と、ここらへんはあくまで私見ですので、適当に聞き流してくださいませ^ ^; と、ここまで延々と書いておいて何ですが、前述のとおり譜面上ではあくまで「ラと、その上に装飾記号」しかないため、絶対に「ラソラ~~」とひかなければならない道理はないんですね。 となれば、解釈の余地があるワケで、オルガンの先生はコンサートでこのような出だしを聞いたそうです。 「ラソ♯ラ~~」 一瞬耳を疑うだろうなあ。間違えたのかしら?って見渡しちゃいそう^ ^; 優しい雰囲気の曲ならボールもあまり力をいれて投げつけない方がいいですけど、最初から最後まで緊張感がはりつめる「トッカータとフーガ ニ短調」では、やはり気合いを入れてボールを投げた方が観客も身がひきしまると思いますけどね~。 他にも「ラソラソラ~~」なんてバージョンもあるそうです。う~ん、ちょっとまのびしてるかな? オルガンの先生から面白い話を聞いたので、記事にしてみました。 次回こそは「大航海時代」に入りたい…。希望になってきているのがつらいトコロです^ ^; お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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