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カテゴリ:観る・聴く
ということで心の中とmixiでグチをつぶやきながら定刻7時前に京都駅八条口に到着。直ぐに駅の南北通路を通って烏丸口に移動。
バスチケット売り場でJR西日本バスの栂尾往復割引チケットを買って、ついでに売店で朝食用のパンと飲み物を調達した。 すぐにバスが来たので乗り込む。多客期なので心配したが座れた。このためにも夜行バスをチョイスしたので寝られなかったがヨシとしよう。満員のバスは栂尾に向けて定刻7時15分に発車した。京都は快晴! 冬支度の京都市内、昔ながらの町屋やレトロな看板を見るとホッとする。乗ること約1時間、周山街道をくねくねと登っているとパッと景色が明るくなり三尾に来た!という思いになった。紅葉のピークは過ぎているがまだまだ錦秋という景色である。真直ぐ伸びる北山杉も見え隠れして百恵映画「古都」の冒頭を思い出す。この辺り、愛宕山系の海抜900mほどの山並みが穏やかに連なり、まことに風光明媚な景勝地である。 終点の栂尾で下車。バス停脇からいきなり始まる急坂道の石段が栂尾高山寺の裏参道だ。途中何度も休憩して登り切るとまさに深山幽谷の雰囲気の中に凛とした佇まいの国宝・石水院がある。 遥かな山並みを見渡しながら一息付く。空気が冷たい。 このお寺の寺宝は何といっても国宝「鳥獣人物戯画」。本物は東京と京都の国立博物館に収蔵されているため石水院内ではレプリカが展示されている。石水院を出て、広い寺域に点在する明恵上人開山堂や大小の塔頭を見学、高山寺のトレードマークである菱形の敷石のある表参道から下山した。 次に向かったのは槙尾西明寺。またまた石段の山道をひたすら登る。三尾はともかくこの連続に耐えないといけない。 コンパクトな寺域ながら清浄な雰囲気の漂う素敵なお寺だ。 本堂正面の須弥壇上の厨子に安置されている、鎌倉時代に造られた清凉寺式の釈迦如来像は小像ながらバランスがよく、手相を始め細部のディテイルが素晴らしい。ずっと観ていたくなる仏様である。右の脇陣には木造千手観音立像(平安時代・重要文化財)と愛染明王像(?鎌倉時代後期)が安置されている。本尊を含め、いずれも近寄って良くご覧くださいとの嬉しい配慮で細部まで鑑賞可能。脇陣は庭から外光が射すのでとても見やすい。千手観音、愛染明王共にお顔もお姿も素晴らしい。表に出ると本堂前に樹齢700年の高野槙がある。明るい樹皮の色と青々とした葉のコントラストが見事だ。 西明寺を下山してしばらく周山街道をテクテクと下る。街道に沿うように流れている清滝川の清流に紅葉が映って風情バツグン。何度もシャッターを切った。 歩くこと約10分。清滝川に掛かる朱塗りの高尾橋を渡ると神護寺参道が始まる。ここの石段が一番辛かった。ふくらはぎが攣りそうなのを騙しながら何度も休憩して門前に辿り着いた。 山門をくぐるとぱっと明るく境内が広がる。先ほどの山道が嘘のようだ。整備された境内には数々の塔頭が建ち並んでいる。 空海が東寺や高野山の前に長く滞在し灌頂儀式(密教の重要な儀式)を行った寺であり、また最澄もここで法華経の講義をしたことがあるなど、日本仏教史上重要な寺院である。 その一番奥に堂々とした金堂が聳えている。ご本尊は国宝の薬師如来立像。平安初期の仏様で厳しい表情をなさっている。重文の脇侍の日光・月光両菩薩像は作りが薬師如来と似ずあとから置かれたようだ。 堂内左手に寺宝の灌頂暦名(国宝)が展示されている。弘法大師の直筆。自身の心覚えのために認めた書として自由闊達な書風だそうで書の世界で貴重な資料とされている。また、美術史や歴史の教科書に必ず掲載される源頼朝の肖像(国宝)もここの寺宝であるが金堂内にはレプリカが展示されていた。 金堂をあとに、神護寺名物のかわらけ投げに行く。 境内西にある地蔵院から谷に向けて素焼きの円盤状の盃を投げて厄除けとするもので、古典落語の愛宕山にも出てくる。但し落語に出てくる的はないし、かわらけの代わりに小判を投げているお大尽もいない。私は過去何度かここから投げていてコツを覚えているのでけっこう上手い。右手の親指と人差し指で逆さにしたかわらけを持ち左脇腹から水平に手首のスナップを利用して放つ。真直ぐに飛んで谷に吸い込まれてゆくととても気持ちの良いものだ。はじめての方は力んでしまって左右にカーブしたりすぐに失速したりする。かわらけは2枚100円。500円で10枚買って連続で投げた。投げる時に「それっ!」と口にしてしまうのは、好きだった故志ん朝師匠の愛宕山での語り口を真似ている。愉快愉快。そして気持ちよく下山した。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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