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テーマ:暮らしを楽しむ(388412)
カテゴリ:雑感
皆さんは長崎の被爆者、渡辺千恵子さんをご存知でしょうか
かく言う私自身も、ものすごく昔、青年劇場が新宿駅の南口付近にあったころ、「誓いの灯を長崎に(作・後藤陽吉)」という作品で見て知った方であり、それから相当の月日が流れてすっかり記憶の彼方へ行ってしまっていたお名前だったんですが・・・ ちょっとしたご縁があって、今度9/8に埼玉県の所沢ミューズという劇場で渡辺千恵子さんの半生を描いた合唱組曲「平和の旅へ」に参加することになりました そこで渡辺さんのことを調べてみようとネットで見てみたのですが、あんまり出てこない 図書館で本を探しても、「長崎を忘れない」という絵本が書庫にあっただけ。 楽天ブックスは残念ながらダメでしたが、アマゾンで以下の3冊が手に入りました 渡辺さんの著書で一番有名な「長崎に生きる」をはじめ、写真がたくさん収録されている「長崎よ、誓いの火よ」、そして渡辺さんの車いすの家を作った日比野正己さんの「福祉に生きる 渡辺千恵子」です。 これらの本をを読んで、改めて「渡辺千恵子」という名前が現代社会から忘れ去られていくのは本当に残念だと感じています。 簡単に渡辺千恵子さんのことをご紹介してみたいと思います 渡辺さんは1928年(昭和3年)、長崎に生まれました。 被爆したのは16歳の時。学徒動員で三菱電機の工場で働いていた時でした。 壊れた建物の下敷きになり、脊椎損傷で寝たきりになってしまいます。 高熱と下痢にも苦しみ何度も生死の境をさまよいながら、それでも母親と兄弟の必死の看護で奇跡的に命をつなぎ留めます。 しかし戦後10年間は、訪ねる人もなく、自宅の一室に横たわったまま、絶望感に苦しみながらひっそりと暮らしていたそうです。 しかし、ビキニ環礁での第5福竜丸の事件も起き、社会は原水爆禁止の運動が次第に盛り上がりを見せ始めていました。 そんな折、千恵子さんのところに同じく被爆して心も体も傷ついた女性たちが訪ねてくるようになりました。 そしてそれは「原爆乙女の会」となり、広島で開かれた「第一回原水爆禁止世界大会」では二人の仲間を送り出し、それが被爆者の思いを世界に向けて発信した最初になりました。 そして翌年の第二回世界大会は長崎で開かれ、そこでは千恵子さん自身が訴えたのです。 千恵子さんは初め「不自由な体を人目にさらしたくない」という気持ちもあり、発言要請にすぐには応えられなかったようでしたが、その背中を押したのは他ならぬお母さんだったそうです。 千恵子さんはお母さんに抱かれ、はじめて3000人という大勢の参加者の前に出ました。 その時の訴えを少しだけ紹介します。 「私は長崎原爆青年乙女の会の渡辺千恵子と申します。長崎大会は私にとっては二度とない良い機会でございますので、母の手を借りて出席させていただきます。大会にご出席のみなさま、みじめなこの姿を見てください。私が多くを語らなくとも、原爆の恐ろしさはわかっていいただけるものと思います。 中略 世界の皆様、原水爆をどうかみんなの力でやめさしてください。そして私たちが、ほんとうに心から生きていて良かったという日が一日も早く来ますようにお願いいたします。」 これが千恵子さんの大きな転機となり、核兵器廃絶の運動が千恵子さんの生きがいになっていきました。 その後、車いすに座れるように両足のアキレス腱を切り、脊椎を整形する大手術を受け、仲間の協力で車いすで暮らせる家をつくります。 その家で、今度は車椅子の千恵子さんが年老いたお母さんの介護をしたそうです。 そして千恵子さんは車いすでジュネーブの国連軍縮会議にも行くし、ニューヨークへも、ドイツ、ギリシャへも平和を訴える旅を重ねました。 もちろん国内でも各地へ出向いて訴え続けました。 そんな中で、1985年に渡辺千恵子さん自身の語りを交えて初演されたのが今回の「平和の旅へ」という組曲です 渡辺千恵子さんは1993年、64歳で亡くなられるまで、核兵器廃絶、被爆者援護法の制定、そして被爆者に限らず障碍者の運動とも連帯して、その人生を生き抜かれました。 私が若かったころ、オリンピックの聖火を平和の象徴として日本各地に灯そうという運動がありましたが、それも千恵子さんたちの運動でした。すっかり忘れていましたが、板橋の平和公園にも、その火は灯っているはずです。 いま、核廃絶と被爆者救済の運動や、原発ゼロを目指す運動が、再び大きく燃え上がり始めています。 「被害者は私を最後にしてください」という千恵子さんの血を吐くような訴えは実現できずにフクシマがおこり、これからもたくさんの千恵子さんが生まれてしまうのかもしれません。 戦争の痛みは、被爆の悲しみは、しっかりと次の世代に伝えていかなければ 9/8のコンサート、楽しみです お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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