生きている新劇史
今日はいいお天気駒場東大前の日本近代文学館で、中村美代子さんのお話を聞く会が催されるというので、楽しみにして出かけた。近代文学館は、昨年青年劇場で「藪の中から龍之介」という芝居をやったときにも話題になり、一度出かけてみたいと思っていたところだ。ただし今回はそうそうあっちこっち見学する時間もなく、とりあえず東門入ってすぐの「和館」だけのぞいた。ここは、昔前田公爵のお屋敷で、洋館と和館とがあり、両方とも無料で見学できる。和館の見事な庭に面した縁側で、読書をしている女性がいた。近代文学館は外階段から2階にあがる、コンクリートの建物。その3階で会は行われた。イケメンの若い俳優さんが案内係をされていた。中村美代子さんのお話は今日で2回目。前回は出席できず、先日送られてきた会報で読んだだけだが、その生き生きとしたお話しぶりが伝わってきたものだ。今日も中村さんはお元気で、とても86歳と思えぬほど。「骨折しちゃってからダメなのよ」などと言われていたがどうしてどうして。始まる前からも知り合いの方々と元気におしゃべりされていて、その後、小沢昭一会長のご挨拶で始まると、一気に1時間半、まぁ、大きなお声ではっきりと、表情豊かにお話してくださった。「あともう、残り時間がなくなってきたのですが・・。」と言われて「まぁ!これからが本題だったのに!」と。千田是也、滝沢修、宇野重吉、森雅之、丸山貞夫、杉村晴子、岸輝子、村瀬幸子、三木のり平、青山杉作、土方与志、小沢栄太郎、中村伸郎、東山千恵子、いま、ざっと思い出すだけでもこの輝かしい先輩方との思い出がいきいきと、私の目にも浮かぶようにお話してくださった。「検察官」の舞台の話だったかな、ウェイター役の三木のり平さんが、舞台袖で持って行く食べ物、それも戦後の物資のない中で苦労してサツマイモでつくったものを落としてしまい、近眼の眼でやっとこさ拾って舞台に出て行って、そのゴミだらけの食べ物を千田先生たちは舞台上で食べなくてはならなくて食べちゃったとか、でもそもそもお腹がすいていたから、こっそりつまみぐいをしていて、数が減っていたとか、何日も何日も徹夜して舞台セットをつくったとか、移動演劇で泊まった旅館の大きな風呂が混浴だったとか、美代子さんの表情も本当におもしろくておもしろくて大笑いしながら聞かせてもらっった。またテープをおこして会報にしてくださるだろうから、楽しみです。