カテゴリ:歌舞伎
歌舞伎座・8月納涼歌舞伎の第三部は、常磐津、竹本、長唄の三方掛け合いによる舞踊劇『紅葉狩』とヴェルディ作曲のイタリアオペラ「アイーダ」を台本に野田秀樹が新たに書き下ろした『野田版 愛陀姫』である。
舞踊劇『紅葉狩』は、勘太郎の頑張りにもかかわらず、彼の生真面目な性がそのまま出たの か、前シテ(更科姫)、後シテ(鬼)とも、どちらかというとおとなしめなのが意外な感じであった。腰元ででている名子役・鶴松の愛らしさ、同じく腰元の中村しのぶのたおやかさは、目の保養。 『野田版 愛陀姫』は、大好きなオペラ「アイーダ」歌舞伎版ということで楽しみにしていた舞台である。ストーリーのすすめ方と台詞が、ほぼオペラ「アイーダ」そのままの趣で、古代エジプトとエチオピアの設定と時代背景が、戦国時代の美濃(エジプト)と織田(エチオピア)の争いに置き換えられての上演である。 曲は、「清きアイーダ」や「凱旋行進曲」などのオペラからのものを和楽器で演奏しているのはおもしろいのだが、アリアの日本語訳を置き換えた台詞のみで心理描写を通すため単調になるのが気になる。 ここは、義太夫などを使って語らせる方法を用いると、おもしろみが増し歌舞伎らしさが出るのではなかろうか。 また、アイーダの名アリアに代わるものとして七五調を意識した台詞などは、もうひとひねりほしいところでは、ある。 凱旋の場での「凱旋行進曲」では、装置のおとぎ話風の背景から、ディズニーのエレクトリカルパレード風と、何でもありの歌舞伎(傾く)を踏襲して楽しい。 でも、私的には、ここは、出来たら花道から花を撒きながらの凱旋の出がよいなぁ(今回の演出では、花道をほとんど使わないのが残念)、時間がかかるし人数が足りないか? 出演者では、野田氏の演出と相性が良いのか、今回もインチキ祈祷師・福助が、凄い。 祈祷師二人(荏原と細毛)のモデルは、この人あの人とも思えて、人々をあやつっていくのには、参った。ちなみに、祈祷師として、権力を増す細毛が「天の声は聞こえないが、民が何を望んでいるか聞こえるようになった・・・」とほくそ笑む姿は、不気味である。 ともかく福助の思いきりのよさが、この人の真情かとも思えて、本人も毎日楽しいだろう♪ 相変わらず、薄幸な雰囲気が良く似合う愛陀姫の七之助が可憐である。 衣装は、斎藤道三の長く尾を引く掛け衣にイラスト的な大蛇が描かれていて、これが目を惹く。 自分が仕掛けた祈祷師によって、最後には自分の運命までも定められてしまう濃姫。何とも皮肉な結末を見せる『野田版 愛陀姫』では、あるが、次回、オペラ「アイーダ」を観るとき、祈祷師の存在に対して、ちょっと見方が変わるかもしれない。 <出演者> ○新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり) 更科姫実は戸隠山の鬼女: 勘太郎 山神 : 巳之助 従者右源太 : 高麗蔵 同 左源太 : 亀 蔵 侍女野菊 : 鶴 松 腰元岩橋 : 市 蔵 局田毎 : 家 橘 余吾将軍平維茂 : 橋之助 侍女 : 中村しのぶ ○野田版 愛陀姫(あいだひめ) 濃 姫 : 勘三郎「アムネリス:エジプト王女 →ラダメスを愛している」 愛陀姫 : 七之助「アイーダ:エチオピア王女でエジプトの女奴隷→ラダメスと相愛」 木村駄目助左衛門 : 橋之助「ラダメス:エジプト軍隊の指揮官→アイーダを相愛」 斎藤道三 : 彌十郎「エジプトのファラオ:アムネリスの父」 祈祷師荏原 : 扇 雀「ラムフィス(バス):祭司長」 同 細毛 : 福 助「同 」 織田信秀 : 三津五郎「アモナズロ:エチオピア王でアイーダの父」 鈴木主水之助:勘太郎 高 橋 : 松 也 多々木斬蔵:亀 蔵 ★「」内はオペラ「アイーダ」の主な役所(9月7日追加) 本日のきもの:夏紬の染め訪問着に、鉄線模様の絽名古屋帯、帯留は蒔絵の蜻蛉。半襟は藤色のビーズ、足袋は藤色の水玉。本日は霧雨が降る天気で涼しい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 8, 2008 05:28:08 PM
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