カテゴリ:歌舞伎
新秋九月大歌舞伎を新橋演舞場で観る
源平布引滝は、並木千柳、三好松洛の合作により寛延二(一七四九)年に初演された義太夫狂言の名作である。源平合戦より少し前の木曽源氏の運命と、木曽義仲の誕生秘話や、後に手塚太郎に討たれる実盛の逸話(実盛は、寿永2年(1183)に加賀の国・篠原の戦いで戦死。この時に実盛が鬢も髭も黒く染めて出陣したのには理由がある)が語られる。 最近は、見取り狂言で『義賢最期』と『実盛物語』が別々に上演されることがほとんであるが、めったに上演しない(実はわたしも初めて観た)『竹生島遊覧』を入れることで、後の実盛の思いと源氏にとって白旗がいかに大切かが非常にわかりやすくなっている。 出演者では、主演の海老蔵が、源義朝(頼朝・義経の父)の弟・木曽義賢(義仲の父)と坂東武者でありながら平氏に仕える斎藤実盛の二役を演じ、荒事の義賢を壮絶(一歩間違えれば、大けがの、“戸板倒し”や仁王立ちからの“仏倒れ”などの殺陣)、対照的な実盛を丁寧に演じて見応えがある。 特に、実盛は、語りも糸にのり、いつも気になる台詞の早口もなく、この役どころが身体に入っている感じで、最近の海老蔵では、「天主物語」の姫川図書之助と双璧を成す当たり役では、なかろうか。 また、『義賢最期』では、葵御前の松也と待宵姫の梅枝という若手の二人の女形姿が美しく眼の保養であった。 『実盛物語』では、瀬尾の市蔵が、出色の出来で、彼の瀬尾があったればこそ舞台が引き締まった感がある。 昼の部最後の『枕獅子』は、真女形の『鏡獅子』か。 人気舞踊の『鏡獅子』の原型ともいえる作品で、能の「石橋」から出た舞踊としては、『相生獅子』に次ぐ古い作品なのだそうである。昔、観たような記憶もあるが忘却。 ほとんど、初めてという感じで、傾城・弥生の美しい姿を堪能する。内掛けの風情も艶やかで衣裳の引き抜きも華やかで魅力的。禿の松也と梅枝の胡蝶も初々しく可憐でうっとりと眼の保養を楽しむ。 新秋九月大歌舞伎・昼の部 平成20年9月1日(月)~25日(木) ○、源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき) 義賢最期、竹生島遊覧、実盛物語 木曽義賢/斎藤実盛: 海老蔵 下部折平実は多田蔵人: 権十郎 小万: 門之助 進野次郎: 男女蔵 葵御前: 松 也 待宵姫: 梅 枝 九郎助: 新 蔵 塩見忠太: 猿 弥 瀬尾十郎: 市 蔵 小よし: 右之助 平宗盛: 友右衛門 ○、枕獅子(まくらじし) 傾城弥生後に獅子の精: 時 蔵 禿たより: 松 也 禿ゆかり: 梅 枝 当初は、海老蔵ファンとお付き合いで観たような昼の部であったが、大満足の新秋九月大歌舞伎・昼の部であった。 歌舞伎を見慣れない方にも充分楽しんでいただける舞台なので、観劇を迷っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ、どうぞ。 本日のきもの:まだまだ暑い九月の初めということで変わり絽の訪問着。柄は秋草。大好きな桔梗の花も描かれている。帯は紫の燕が飛ぶ袋帯(「燕帰る」で秋の風情)。帯留は銀細工のアールデコの真珠で全体を華やかにしてみる。かぶりつき席用のコーディネートではある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 10, 2008 09:07:38 PM
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