キモノで観劇・感激日記

東京宝塚雪組公演「ソロモンの指環/マリポーサの花」を観る。(追記：11/25)
ソロモンの指環は、30分のショー、マリポーサの花は、2時間ばかりのストレート芝居と言っていいほどのセリフが多いミュージカル。

ソロモンの指環（作・演出／荻田浩一）は、80人近い多人数を入れ替わり立ち替わり使って見所の多い作品。
この作品をもって、宝塚を退団する演出家・荻田浩一氏の集大成と言っていい濃厚な雰囲気を持っている。

豪華な舞台に展開する、伝説の指輪にまつわる物語。
プロローグから、
森に海に砂漠に展開する歌とダンスは、色彩感に満ち、華やかさと哀愁と妖しさとの中で、最後の祝祭へと華麗で耽美な舞台を繰り広げ「オギーワールド」ともいうべき、彼独自の優雅な耽美さに満ちて我々を魅了する。
祝祭の後の、一抹の寂しさもまた心地よいアッという間の作品である。

印象に残ったのは、片翼の天使の美しさ（凰稀かなめ）、森の場面でのキリンの可憐さ（小柄な山科愛が大きなキリン） 、海の場面へつなぐ癒しの歌（彩吹真央）、曳いてはかえす波の場面での群舞の儚く妖しく静謐な美しさは秀逸、大好きなショーとなった。

適材適所に歌の得意な奏乃はるとのプロローグでの起用、今回、退団する山科が純白のドレスでトップ・水と舞うデュエットや、同じく退団する柊巴の銀橋など、出演者への愛情を感じる演出には心が和む。

なお、このショーでは、プロローグから娘役トップの両脇に控える注目の同期・長身・若手男役 緒月＆凰稀が目をひく。好対照な雰囲気を持つ二人（男っぽい緒月遠麻、美貌の凰稀かなめ）ならでは、である。

「ソロモンの指輪」
作・演出：荻田浩一
作曲・編曲：高橋城、甲斐正人、斉藤恒芳
編曲：高橋恵
音楽指揮：清川知己
振付：羽山紀代美、伊賀裕子、川崎悦子
装置：大橋泰弘
衣装：任田幾英
照明：勝柴次朗
音響：大坪正仁
小道具：石橋清利

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「マリポーサの花」（作・演出／正塚晴彦）は、キューバ革命（マリポーサの花はキューバの国花）をモデルにした、ハードボイルドタッチの物語。
雪組男役陣の充実度が、わかる舞台でもある。ただ、脚本・演出が、１対１、2対2などで進む長台詞の場面が多く、大劇場向きいうよりは、どちらというと中劇場向きの演出では、なかろうか。

しかしながら、男役トップとして充実期を迎える主演・水夏希は、出ずっぱりの奮闘。スーツもよく似合い、元軍人にしてクラブのオーナー、裏では、人々のために密輸もいとわぬ好漢を見事に演じている。

かつての部下で友人役を演じる彩吹真央は、自然体の男役を演じ、物語そのまま、水を支える。エンドロール近くの、二人の友情は、二人が実は女性である事を忘れて、観客を虜にする。彩吹の孤独の中での歌唱もさすが。

物語を動かす学生を演じる音月桂は、良家の出でありながら、革命に身を投じる熱血漢を演じて若さ溢れ好感度大。

初日付近には、まだ、青臭さが残っていたアメリカ・マフィアのボスを演じる緒月、表の顔はアメリカの新聞記者で実はCIAの凰稀、マフィアの部下・大凪など芝居が深くなり、見どころ満載。
そして、忘れてならない農場主・未沙の洒脱さなど見どころは、多い。
ヒロイン白羽ゆりが、初日付近は、こなれていなかった役どころを、今日は、自らの意思を持つ農場主の娘として魅力的に演じていた。
しかしながら他の娘役人は、しどころが少なく、これは残念であった。

2時間近くのミュージカルの最後に、ショーがつくのだが、そこで、はじけまくる娘役ダンス人に、やっと一息つく感じではある。

ダンス場面では、
エンドロール近くの戦闘場面の兵士と革命軍のダンスの振り付けが、圧巻で、宝塚の振り付け師では、ないだろうなぁと思ったら外部の平澤智氏であった。
納得！！

作者・演出の正塚晴彦は、ショー場面での演出が苦手なのか、エンドロールに、せっかくの大・中・小のセリなど舞台装置を使っていないのは、残念であった。

ともかく、男役の完成度を観たいと思われる方には、お勧めのハードボイルド宝塚では、ある。

＜主な出演者＞
ネロ ：水 夏希
セリア ：白羽 ゆり
*～*～*
イスマヨール： 未沙 のえる
ゴンザレス： 飛鳥 裕
サルディバル ：未来 優希
エスコバル ：彩吹 真央
アリシア ：天勢 いづる
リナレス ：音月 桂
シーナ ：山科　愛
ラファエル： 彩那　音
コントレラス： 柊　巴
ロジャー： 凰稀 かなめ
フェルッティ： 緒月 遠麻
イヴァン ：沙央 くらま
フェルッティの子分 ：大凪 真生
チャモロ　： 大湖 せしる
ブランカ： 舞羽 美海

作・演出：正塚晴彦
作曲・編曲：高橋城、玉麻尚一、太田健、高橋恵
音楽指揮：西野淳
振付：伊賀裕子、平澤智
装置：大橋泰弘
衣装：任田幾英
照明：勝柴次朗
音響：大坪正仁
小道具：伊集院撤也