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カテゴリ:着物道場
今日は、着物のあれこれ、ショールについてお話します。
先日、目黒の池田重子さんの「時代布 池田」で 素敵なショールを見つけたことから、思い出したお話です。 先日も掲載した画像です。 「1500円」という値札がついているだけで、素材表示はなし。 でも、この手触り…、ただものではない…。 お店の方に確認すると、「絹です!」と、即答。 そうだと思いました。 1500円で、いいんでしょうか? 買っちゃうよ~。 買ってから、家で気がつきましたが、 昔の三越マークがついてました。 手放した方、ありがとう。私は一生大切にします。 ところで、「帯付き(おびつき)」という言葉を、ご存知でしょうか? 着物に帯(お太鼓姿)だけの姿のことです。 「着物に帯って、当たり前じゃない?」 いえいえ、実は、当たり前じゃないんです。 「帯付き」って、貶し言葉(けなしことば)なんです。 「まあ、あの人、帯付きで歩いてるわ」 → なんて下品なんでしょう。 という意味で使います。 では、どうすれば良いか? 羽織、コート、塵除け、道行(みちゆき)、 そして、ショールなどがあればいいんです。 本来、帯を剥き出しで外歩きするのは、 とっても恥ずかしいことなんです。 昔(戦前)は、良家の婦女子は、帯剥き出しで、 外歩きすることはありませんでした。 なぜか? 簡単です。 そういうものではないから。 それはしてはいけないルールだから。 季節のルールと同じものだと思って下さい。 そういうものだから。 理屈をこじつけるなら、帯の同じ所が痛むから、など、 苦しい言い訳もできますが、 「それが着物のルールだから」と、覚えておきましょう。 古い映画を観ても、 お金持ちの婦女子たちは、家でもしっかり羽織を着ています。 最近の映画では、そんなことないですけどね。 話はちょっと変わりますが、 ロシアのドストエフスキーの小説「罪と罰」はお読みでしょうか。 主人公の恋人が娼婦なのですが、 彼女の娼婦ランクを説明するのに、 「彼女はショールも羽織らず…」 というような描写があります。 これは、安い料金で、宿屋から宿屋へ、次から次へと 一晩に何人も仕事を取らないと生活が成り立たない安い娼婦、 すぐに脱ぐから、ショールを羽織る暇もないほど働きづめ、 という意味で遣われています。 この場面を読んだ時、私は雷に打たれたように ビビビッと全身が震えました(松田聖子か?)。 誰に聞いても、いくら本を読んでもわからなかった 「帯付き」がなぜいけないのか、 そういうことか と、初めて心から納得できました。 つまり、古今東西、羽織物がない、というのは、 恥ずかしいことなんです。 それにしても、着物のルールの理由を ロシアの文豪に教えてもらうとは、 きっと、ドストエフスキーも予想外のことでしょう。 でも、着物の雑誌では、みんな帯は剥き出しじゃない? その通り! だって、帯の宣伝ですから。 近年、これほど帯付きが平気になってしまったのは、 雑誌やマスコミの責任もあると思います。 奥ゆかしさが、なくなってきたというか、 恥ずかしさの基準が変わってきました。 言葉も変わるし、流行も変わるので、 これはしょうがないことだと思います。 でも、帯、特にお太鼓結びは、 いつも同じ場所が剥き出しになるので、 どうしても痛みやすいですから、 何か羽織ることは習慣にしても、良いのではないでしょうか。 お出掛け会は、 帯付きもよし、羽織物も、またよし、 というスタンスでいます。 ショールがあれば、帯の痛み防止の他にも、 形にちょっと自信がない時に、助けてくれますしね お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.05.15 19:25:46
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