申し込む
「申し子」について考えていました。(1) 神仏に祈ってさずかった子。 (2) 霊力を持つものから生まれたように見える子。 (3) あるものの特性を著しく反映して生まれたもの。 ここまでは国語辞典から。人が何かに祈ってさずかった子の、逆もあるかも。そこで、(4) ‘何か’から望まれて生まれた子。例えば「塩麹」の浅利妙峰さんや、女子レスリングの吉田沙保里選手。塩麹が、女子レスリングが(あるいは高速タックルが)、浅利さんを、吉田選手を通して自分を表現してもらおうと決め、申し込んだに違いない。誰でも、何かの申し子かも。鉛筆削りがやたらうまければ、「鉛筆削り」という行為から望まれた「鉛筆削りの申し子」。体育の時間、ハードルをうまく跳べなくても、くぐらせたら誰よりも速ければ「ハードルくぐりの申し子」。塩麹が全国的に売れれば儲かるし、レスリングが強ければ金メダルを獲って有名になれる。鉛筆削りやハードルくぐりでは?‘何か’達の世界では、金持ちも貧乏も、有名も無名もない。ただそれぞれが、自分をのびのびと表現したいだけ。高速タックルと、超うま鉛筆削りには何の差もなく、人の手を通りたい‘何か’達が、通してくれそうな誰かを、いつだって探している。レジがいくつか並んでいる映画館の売店カウンター。ムスッとした顔で、パサパサのホットドックを売る女子店員。その横のレジでは、お釣り渡しの申し子、映画パンフ渡しの申し子とでも呼んであげたい男子店員。たぶん今は、学校とバイトをかけ持ちでキツキツの毎日。疲れて面倒で、笑顔なんて作りたくもない日があったとしても、きっといつも変わらない申し子っぷり。そんな男子の手を通して自分を表現してもらいたい‘何か’達が、いつ申し込もうかと、レジ前で長蛇の列を作っているはず。‘何か’達にはいいも悪いもないから、不機嫌の申し子、パサパサのホットドックの申し子として申し込まれてしまう場合だってある。人の世界に住む者としては、どっち方面の‘何か’達に申し込まれたいか。冷静に考えたら断るべき申し込みを、知らずに受け入れてしまわないよう。パサパサのホットドックが、あなたの手を通ったら、なぜか超うまホットドックになりますように。