どこに焦点を合わせますか?
施術者としての経験が浅いうちは、施術に時間がかかります。自らを振り返ってみても、硬いところをゆるめ、やわらかすぎれば引き締め、歪みを整え等、今なら3分でできることを、30分くらいかかっていた気がします。その箇所が硬いのかやわらかいのか、歪みがあるのかないのか。15分かけて必死で探して見分けて、操作して、変化が出なくてまた操作しているうちに合計30分。操作が長い=気持ちよい時間が長くて喜ばれますが、どこに歪みがあるのか、あちこち探されている間は、気持ちよくもなんともなく。間延びした空気になればなるほど、あせって余計に歪みが探せなくなり、時間ばかりが過ぎていったり。けれどこの頃は、施術の最初から最後まで「整える!」という気持ちが貫かれていますから、結果オーライになることも多いのです。経験を積み、見極め力がついてくると、施術開始の段階で、自分の力量以上の歪みかどうか、分かるようになります。それでも、初心者のときと同じように「整える!」という気持ちを貫けるかどうか。施術者の思いが「硬いな〜、今の自分の力では無理だから、せめてゆっくり丁寧に」と、「整える! そのためには?」とでは、どちらも長い施術なのに、何のために時間をかけているかの部分で、まったく別物になってしまいます。「花子とアン」に登場する絵描きの旭(あきら)さんは、すごい作品を描いて周りをびっくりさせようしていた頃は、芽が出ませんでした。絵のモデルになってくれる人にしっかり向き合い、尊重するようになって、よい絵が描けるようになりました。絵を描くのも施術をするのも、思いの方向によって、到達地点が変わります。「料理の勉強に終わりはない。学校ではレシピをいくつできるようになるかではなく、生涯を通じた料理の勉強の仕方を学ぶ」と、辻調理師専門学校の辻校長が、テレビで話されていました。施術も同じです。どんなに自分が上手くなったと思っても、それを上回る歪みは、目の前に現れ続けます。手持ちのレシピ(技法)がなくならない範囲で線引きをして、それ以上の歪みの方は受け付けないようにしても、仕事としては成り立っていくでしょう。そこを越えて進み、「整える!」ために長い時間をかけ、打ちのめされることもあるでしょう。そんなとき、自分だけのレシピが編み出されます。来週から「身体均整法学園」での担当授業が始まります。生涯を通じた手技の勉強の仕方と、「整える!」マインドを一緒に磨いていきましょう。無料イラスト「イラストわんパグ」さんより