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カテゴリ:里おじさん活動
先週の土曜日の午後、講演会に参加してきました。 講演した人は、無名ですが、この地方では、児童養護施設出身者など社会的養護の下に暮らす子どもたちのために、NPOを立ち上げて頑張っている青年です。 彼と知り合ってかれこれ10年近くになります。 この間、彼は仕事をしながら頑張ってきました。 2時間半もの長い話を彼が講演するのは、初めてではないでしょうか。 なかなか良いお話でした。 涙腺が弱くなったオヤジは、ハンカチが欠かせない、そんなお話でした。 かいつまんでのご紹介です。 彼(Aくん、31歳です。)は、小学校1年生から高校3年生まで施設で暮らした。 現代では大人数の6人兄妹(Aくんは5番目。姉3人、兄1人、妹1人)でしたが、5歳の時に両親が離婚。 両親が揃っていた5歳までは、大事にされた記憶がある。 上の3人の姉は母に引き取られ、兄、自分、妹は父と一緒に暮らすことになった。 その結果、父は父子世帯となったが、父なりに3人の子を懸命に育てていたようだ。 子どもたちを保育園に預けて、一生懸命に働いていた。 Aくんらは保育園で遅くまでの延長保育。 いつも保育園に最後まで残っていたのは、Aくんと妹。 それでも父は保育時間ギリギリに、走りこんで迎えに来てくれた。 迎えに来たら、父はAくんと妹を担いで車まで運んでくれた。 父は、頑張って子育てをしていたと思う。 Aくんは、小学校に入学すると、うそをつき、万引きして、よく怒られた。 大人になった今考えると、その時は父が忙しくて、やっぱり寂しくて、気を引きたかったと思える。 懸命に子育てしていた父であったが、頑張っても経済的に立ち行かなくなり、子どもたちを施設に預けることになり、Aくんも児童相談所に保護された。 一時保護所で1か月過ごしてから、その後25人の大舎制の児童養護施設へ移った。 話合いを大事にする施設だった。 子どもたちが、問題行動を起こしたり、何かやりたいと言ったら、とことん職員は向き合ってくれた。 だから、Aくんも、思っていることを口にすることができるようになった。 人の前に出て話ができるようになったので、中学、高校と生徒会の役員を務めた。 今、社会的養護は、里親重視に動いているが、施設の集団生活には、集団のよさがあると思う。 それでも、施設の生活にはいろいろなことがある。 例えば学校の宿題の音読。 音読したことの確認で、音読カードに家の人の印鑑をもらってくることになっていたが、Aくんは自分の姓と違う名前の印鑑が押してあった。 Aくんの音読を確認した職員の印鑑であった。それも、職員の勤務が違うので、日々違う人の名前。 どうして違うんだ?と同級生に聞かれた。 複雑な気持ち、子どもなりにいろいろな葛藤がある。 大学に行きたかった。 小学校の先生になりたかった。 そのために高1・高2とバイト2つ3つかけもちした。 平日は、5時から9時まで、土日は9時から5時まで。 その合間に、各種団体からの給付型奨学金を受けるための書類作り。 忙しかった。 バイトで120万円たまったが、大学入学したらあっという間になくなった。 大学でももバイト漬け。 バイトに忙しくて、授業も欠席がちになった。 親のすねをかじっている同級生から、どうして授業に来ないんだ、と言われて、マジでキレたこともある。 でも、大学のゼミの指導教官が素晴らしい人だった。 実践を大切にする教官。 まずは、子どもたちの中に入ってみろ、そこからいろいろ見えてくる、と。 だから、自分も子どもたちの中に入って、色々と学んだ。 Aくんが、自身も含めて大切にしていることは、「自分で選択して、自分で決める。」 時間がかかるが、子どもたちに自分で決めることの大切さを伝えたい、と今も思っている。 大学卒業後は、学童保育所の指導員でしばらく働いた。 いろいろと保護者の方や同僚にもわがままを言った。 その時の方とは今も交流が続いている。 今日、初めての講演会を開くと知らせたら、その時の保護者や同僚が、この会場に来てくれている。 本当にありがたい。 子どもたちには、大事にしてもらった経験が大切。 大事にしてもらった経験、例えば自分の話を聞いてもらった経験のある子は、人の話も聞けるようになる。 25歳の時に、母に会いたいと思って探した。 母は一年前に死んでいた。 母に引き取られた姉と20年ぶりに会うことができた。 生前の母のことを聞いた。 母は、Aくんの誕生日が来るたびに、「Aは元気にしているだろうかね?」と気にしていたよ、と。 ああ、ぼくは母に見捨てられたのではなかった、と思った。 一言、母には「生んでくれてありがとう」と伝えたかった。 先日、Aくんは結婚した。 当時の児童養護施設長や大学の仲間たちが祝ってくれた。 施設では人としての温かさを知った。 大学では仲間の大切さを知った。 金銭的には苦労してきたけど、人の縁に恵まれて今日まできた。 という講演でした。 途中でAくんも感極まって、言葉につまったりしましたが、100人近い聴衆は、そんな彼を温かく見守っていました。 温かい空気にあふれたいい講演会でした。 で、別のお話。 リバウンドが止まりません。 体重も、87キロを超えてしまった(汗)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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