カテゴリ:ちょっとショートストーリー
昨日の会社帰り車が壊れた。
オーバーヒートして白い煙が出た。 夜の11時半。雨の中ロードサービスを待って、家に帰宅。 今日は何年かぶりの電車での通勤となった。 世の中こんなにたくさんの人がいるんだな。当たり前だけど不思議だった。 みんなどこに向かっているんだろう。そんな顔つきをしてた。 夜になって、仕事が終わり、いつもの車の鍵をかばんに入れたまま駅に走った。 重い鉄の塊が、たくさんの想いを乗せた会社帰りの人々を運んでいく。 それはまるで、時代という巨大な流れの中で、今いる場所を探す旅人たちのよう。 駅について改札を過ぎる。さっきまで同じ車両に乗っていた人々が散り散りになっていく。 それはなぜか少しさびしいことのような気がした。 高架の下をくぐると、強い風が雨上がりの桜の花びらを運んできた。 そうだ。時は流れていく。 命を搾り出すように咲いていた美しい桜の花も、今は新緑の中に覆い隠されている。 すべてがとめどなく流れていて、ただ自分はその中でひらひらと風に舞う木の葉のようだ。 それは、ある時は失い、新しい何かが生まれ、育み、そしてまた消え去っていく。 美しく、喜びにあふれた今の生命に宿った心は、いつも何かを追い求め、 果てしない旅の中できらきらと光を放ちながら歩き続けていく。 すべての人に幸が訪れますように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ちょっとショートストーリー] カテゴリの最新記事
|
|