新即物主義とギーゼキングのピアノ演奏
1950~60年代、モーツァルトピアノ音楽演奏では、Walter Giesekingが秀逸とされていましたが、彼は新即物主義(Neue Sachlichkeit)を代表する演奏家とされていたのです。良く知られている「デュポールの主題に依る変奏曲」を聴いて下さい!Mozart - Variations on a Minuet by Duport K.573 – Gieseking新即物主義(Neue Sachlichkeit)1920年代の後半から1930年代にかけて、ドイツに起こった写実主義的な芸術運動で、表現主義の反動として合理的・客観的・即物的な対象把握を特徴とする。新即物主義は、マンハイム美術館長Gustav Hartlaubが主宰した美術展(1925)の名称に由来する。第1次大戦から戦後にかけてのイタリアの形而上絵画と擬古典主義,ピカソらの新古典主義,ダダの即物志向などから影響を受けながら,敗戦後のドイツでは,戦前の抽象的,情熱的な表現主義への反動として事象を冷静な視覚でとらえるさまざまな傾向が現れた。そこには戦後社会の混乱の中で見いだされた孤独な事物体験,人間疎外,生活態度などが反映している。新即物主義を時代批判的な左派、右派又は新古典主義に分けている。このような新即物主義美術の傾向は,ワイマール共和国が1924年以後相対的安定期に入り,機械と技術の時代が到来するとともにさらに深化し,対象の冷たい描写が精密になる一方で,その暗示的な性格もいっそう強まって、音楽でもヒンデミットらの反ロマン主義的創作やギーゼキングらの客観主義的演奏スタイルについていわれる。