街道をゆく、ニューヨーク散歩(感想)
”街道をゆく39ニューヨーク散歩”(1994年2月 朝日新聞社刊 司馬 遼太郎著)を読みました。 街道をゆくは、司馬遼太郎さんによる短編紀行集で、1971年から1996年まで週刊朝日に連載されました。 司馬さんが47歳の時に連載を開始し、司馬の死によって濃尾参州記が絶筆となりました。 日本国内ばかりでなくアイルランド・オランダ・アメリカ・モンゴル・中国・韓国・台湾などの各地を訪ねた旅行記で、その地の歴史・地理・人物に焦点をあてています。 ブルックリン橋を造ったジョン・ローブリング、江戸末期に日本にやってきたタウンゼント・ハリス、日本学の世界的な研究者であるドナルド・キーンなどを中心に、マンハッタンの片隅で街の歴史を辿り日本と関わった人々を思うシリーズ唯一のアメリカ紀行です。 アメリカ旅行を記したものは本書しかなく、ニューヨークにあるコロンビア大学で日本に関する講演をするための旅行で目にしたものや出会った人々を中心に話が展開します。 建設中に命をおとした父のあとを息子が受け継ぎ、大事業を成し遂げたブルックリン橋を渡りつつ勃興期のアメリカ文明を思い、日米修好通商条約を締結した際のアメリカ側代表者ハリスの墓参りを通して彼の生い立ちや日本側との折衝の日々を描き、戦前のコロンビア大学で唯一の日本人教授が後世の日本学研究者を生んでいった過程を紹介しています。 アメリカは世界中からの移民を呑み込んで膨れあがり、アメリカのおもしろさは変化であると言います。 日本人も忘れてしまった日本を発見した研究者たちとの触れ合いが語られています。・マンハッタン考古学・平川英二氏の22年・ブルックリン橋・橋をわたりつつ・ウィリアムズバーグの街角・ハリスの墓・コロンビア大学・ドナルド・キーン教授・角田柳作先生・御伽草子・ハドソン川のほとり・学風・日本語・奈良絵本・ホテルと漱石山房・さまざまな人達