日本は国境を守れるか(感想)
日本の主な国境問題は、北方領土、北千島、南樺太、竹島、尖閣諸島など、いろいろ存在しています。 尖閣諸島については、日本政府は尖閣諸島に領有権問題は存在しないとの立場ですが、中華人民共和国、中華民国が領有権を主張しています。 これに絡んで、実際には、不審船、密航、麻薬、海賊などが日常的に頻繁に存在しています。 日本を取り巻く海は様々な脅威にさらされていますが、海を国境とする日本はこの危機に立ち向かうことができるのでしょうか。 ”日本は国境を守れるか”(2002年7月 青春出版社刊 小川 和久著)を読みました。 海洋国家・日本が直面する脅威と国境警備隊としての海上保安庁について日本の危機管理へ提言しています。 小川和久さんは、1945年熊本県生まれ、陸上自衛隊生徒7期・陸上自衛隊航空学校修了、神奈川県立湘南高等学校通信制で併学、同志社大学神学部中退、日本海新聞、週刊現代記者を経て、1984年に日本初の軍事アナリストとして独立し、現在、特定非営利活動法人・国際変動研究所理事長。 これまでに、内閣官房危機管理研究会主査、総務省消防庁常備消防制度検討委員、内閣府沖縄振興開発審議会専門委員などを務め、政府や政党に危機管理や防災への提言を行っています。 いまの日本の国境警備の有り方はお粗末で、世界の沿岸警備隊などと比較すると、アメリカに次ぐ世界第2位の組織でありながら、法整備の不備、自衛隊との不和・連携のまずさ、海上保安庁の武器に対する認識の低さ、などからその力を活かしきれていないと言います。 海上保安庁が不審船に対して、自衛隊と連携で、強い態度に出たのは、1999年3月に起きた能登半島沖の北朝鮮の不審船の追跡事件が最初で、威嚇射撃を行いました。 その数年後、2001年12月の奄美諸島沖の不審船追跡劇と船の自爆の事件もありました。 2001年の海上犯罪は5604件で、海事関係法令違反2241件(約40%)、刑法犯1363件(約24%)、漁業関係法令違反1065件(約19%)、海上関係法令違反573件(約10%)、出入国関係法令違反276件(約5%)、薬物・銃器関係法令違反14件(約0.3%)、その他の法令違反72件(約1.7%)となっています。 密航者で一番多いのが中国人で、2番目がイラン人となっています。 インドネシア方面で時々海賊事件があり、日本の船も時々被害を受けています。 海上保安庁には5つの使命があり、治安維持、海上交通の安全確保、海難の救助、海上防災・海洋環境保全、国内外機関との連携・協力となっています。 海上保安庁はアメリカのコースト・ガードをモデルに作られ、下手に戦争などにエスカレートさせないための安全装置として機能し、国境侵犯などを軍隊が出て解決を図るよりもクッションとなる部分があります。 海洋国家日本が直面する脅威に対処するには、法制の整備、海上保安庁の装備の改革などが必要であり、自衛隊と比べグローバルに活動できる海上保安庁を国境警備隊として活動させ、日本の国際的信用を高めながら国境警備を充実させることを提案しています。第1章 海洋国家・日本の「国境線」第2章 国同士の利害が衝突する「最前線」第3章 不審船が突きつけた海洋警備の問題点第4章 なぜ、1つの海を2つの組織が守るのか第5章 「国境警備隊」を目指す海上保安庁第6章 国境を守るために