世界の地下鉄駅(感想)
世界中の都市に張り巡らされている地下鉄は、華麗かつ幻想的に空間が彩られています。 いくつかの地下鉄は、まるでアートギャラリーかと思うほど美しくインパクトがあります。 ”世界の地下鉄駅 ”(2017年11月 青幻舎刊 アフロ(写真)・水野久美(テキスト)著)を読みました。 インパクトあふれる魅力的な国内外の地下鉄駅を、華麗な写真を中心に厳選して紹介しています。 本書は、世界の36箇所の地下鉄駅の斬新で華麗なアーティスティックな空間をきれいな写真と簡潔なテキストで紹介しています。 テキストを担当した水野久美さんは、愛知県犬山市生まれ、大学卒業後、編集プロダクションに所属しました。 そして、旅行ガイドブックやグルメ情報誌などの制作に携わり、2004年4月に独立しました。 現在、フリーライターで、カルチャースクールの世界遺産講座講師を務める他、日本文化チャンネル桜の番組のキャスターを務めています。 著書には、”いつかは行きたいヨーロッパの世界でいちばん美しいお城””世界の廃船と廃墟””世界の国鳥”などがあります。 写真担当のアフロは、株式会社アフロ /Aflo Co.,Ltdで、東京都中央区築地に本社のある、資本金4,000万円、創業1980年、従業員数139名(2016年1月現在)の会社です。 地下鉄の歴史は、19世紀のイギリスのロンドンから始まりました。 1863年1月10日にメトロポリタン鉄道のパディントン駅からファリンドン駅の間、約6kmが開通しました。 当時のイギリスは鉄道の建設が盛んでしたが、ロンドン市内は建物が密集しており地上に鉄道を建設できなかったためです。 この路線を計画したのはロンドンの法務官であるチャールズ・ピアソンで、1834年に開通したテムズトンネルをヒントにしたとされています。 車両は開業当初から1905年に電化されるまでは、蒸気機関車を使用していました。 硫黄を含む煙が発生するため、駅構内は密閉された地下空間ではなく換気性を確保した吹き抜け構造となっていたほか、路線の一部も掘割でした。 イギリスでの開業後はしばらく間があき、30年近くたった19世紀末~20世紀初頭に欧米の各地で建設されていきました。 1875年にトルコのイスタンブールで、地下ケーブルカーが開業しました。 1896年にハンガリーのブダペストでも、本格的地下鉄が開業しました。 ブダペスト地下鉄は当初から電化されており、これは地下鉄としては世界で最初の電化路線でした。 さらに1898年にはアメリカ合衆国のボストン、そして1900年にはフランスのパリにおいて開通しました。 ドイツのベルリンでも1880年頃には地下鉄を通す計画が存在したものの反対勢力によって計画が遅れ、開通は1902年でした。 第一次世界大戦が開戦するまでには西ヨーロッパや北アメリカの大都市に、第一次世界大戦中から20世紀半ば頃まではヨーロッパ各地の中都市や日本を中心に建設されました。 1970年代以降は、アジアなどの発展途上国での建設が盛んになりました。 地下鉄は今や都市交通の基軸という機能美だけでなく、狭い、暗い、怖いといった圧迫感を払拭するユニークなパブリックアートが多数取り入れられています。 たとえば、剥ぎ出しの岩盤が迫るストックホルムのソルナ・セントラル駅には、約lkmにわたり炎のように燃える赤い空とスプルースの本の森が描かれています。 産業汚染で脅かされていた北欧のヘラジカや、清流で釣りをする親子など、迫りくる当時の危機と葛藤が表現されています。 一方で、ストックホルム中央駅のT-セントラーレン駅は、地下鉄全3路線が交わり混雑するブルーラインのフラットホームがあり、精神か落ち着くようにブルーが採用されています。 さらに、クングストラッドゴーダン駅もストックホルムにありますが、駅名の由来でもある隣接の王立公園の歴史を示す独創的なアートが特徴です。 このように、それぞれの駅には異なったアートがあり、アートに込められた背景を知ればその国や地域の特性が見えています。 アートギャラリーをめぐるように、心華やぐ幻想的な地下空間の魅力を楽しんでいただきたいということです。1.ヨーロッパ ソルナ・セントラム駅(スウェーデン/ストックホルム)T‐セントラーレン駅(スウェーデン/ストックホルム)、クングストラッドゴーダン駅(スウェーデン/ストックホルム)、アール・ゼ・メティエ駅(フランス/パリ)、ヴェストフリートホフ駅(ドイツ/ミュンヘン)、ハーフェンシティ大学駅(ドイツ/ハンブルグ)、ハイデルベルガー・プラッツ駅(ドイツ/ベルリン)、聖ゲッレールト広場駅(ハンガリー/ブタペスト)、カナリー・ワーフ駅(イギリス/ロンドン)、ベイカー・ストリート駅(イギリス/ロンドン)、サザーク駅(イギリス/ロンドン)、ダンテ駅(イタリア/ナポリ)、トレド駅(イタリア/ナポリ)、オライアス駅(ポルトガル/リスボン)、パコ・デ・ルシア駅(スペイン/マドリード)、コムソモーリスカヤ駅(ロシア/モスクワ)、スラブ大通り駅(ロシア/モスクワ)、マヤコフスカヤ駅(ロシア/モスクワ)、ルミャンツェヴォ駅(ロシア/モスクワ)、ゾロティボロタ駅(ウクライナ/キエフ)2.北・中央・南アメリカ 34丁目‐ハドソン・ヤード駅(アメリカ/ニューヨーク)、81丁目自然史博物館駅(アメリカ/ニューヨーク)、デュポンサークル駅(アメリカ/ワシントンD.C.)、ハリウッド/ハイランド駅(アメリカ/ロザンゼルス)、ハリウッド/バイン駅(アメリカ/ロザンゼルス)、ミュージアム駅(カナダ/トロント)、コピルコ駅(メキシコ/メキシコシティ)、カルデアル・アルコベルデ駅(ブラジル/リオデジャネイロ)3.アジア バールジュマン駅(アラブ首長国連邦/ドバイ)、アストラムライン新白島駅(日本/広島)、美麗島駅(台湾/高雄)、復興駅(北朝鮮/平壌)、北土城駅(中国/北京)、雍和宮駅(中国/北京)、国博中心駅(中国/重慶)、烈士墓駅(中国/重慶)