アルツハイマー病は治せる、予防できる(感想)
アルツハイマー病は発見から約100年経りましたが、いまだ根本的な治療薬がない深刻な疾病です。 ”アルツハイマー病は治せる、予防できる”(2016年9月 集英社刊 西道 隆臣著)を読みました。 認知症のうち60~70%を占めるとされるアルツハイマー病について、近い将来治せる病気になるという驚きの研究最前線を紹介しています。 アルツハイマー病は脳が萎縮していく病気で、アルツハイマー型認知症はその症状です。 認知機能低下、人格の変化を主な症状とし、認知症の60-70%を占めています。 日本では、認知症のうちでも脳血管性認知症、レビー小体病と並んで最も多いタイプです。 認知症は2025年には患者数700万人を超えるといわれ、その約60%を占めるのがアルツハイマー病です。 治療薬開発に最も近づいたとされる研究者が、最新の研究成果を明らかにします。 西道隆臣さんは1959年宮崎県生まれ、筑波大学生物学類卒業後、東京大学大学院薬学系研究科修了した薬学博士です。 東京都臨床医学総合研究所・遺伝情報研究部門主事を経て、1997年より理化学研究所脳科学総合研究センター・神経蛋白制御研究チーム・シニアチームリーダーを務めています。 2014年に株式会社理研バイオを設立し、代表取締役を兼ねています。 日本で認知症が広く知られるようになったのは40年ほど前です。 きっかけは、1972年に発表された有吉佐和子さんの小説『恍惚の人』だといわれています。 当時、認知症は老人性痴呆と呼ばれ、その介護を描いたこの小説は200万部を超えるベストセラーになり、映画化もされました。 そこでは、老人性痴呆の症状と介護、記憶の障害、異常な食欲、徘徊、家族も時間も場所もわからなくなった高齢者が引き起こす数々の問題が描かれました。 そして、それに振り回され介護に疲弊する主人公や家族の姿は、人々に衝撃を与え社会問題化しました。 その後実態調査が行われ、1985年時点の認知症高齢者は全国で59万人と推計されました。 報告書では、30年後の認知症高齢者数を185万人と予測し、急激に増大すると予想していました。 しかし実際には、30年後の2015年、認知症高齢者は500万人を超えています。 認知症が増えた最も大きな要因は、日本人の平均寿命が延びたことにあります。 江戸後期の日本人の平均死亡年齢は、30歳に満たなかったともいわれます。 近代化が図られた明治後期~大正初期でも、平均寿命は女性で44.73歳、男性は44.25歳でした。 今や、人は何歳まで生きることができるのか、120歳なのか150歳なのかと真剣に検討される時代です。 平均寿命が延びるにつれ増加してきた病気には、白内障、加齢黄斑変性、骨粗粗症、変形性腺関節症、肺炎、心臓病、糖尿病、がんなど、そして認知症があります。 いずれも年をとるほどかかる危険が高まる、加齢が危険因子である病気で、実際、高齢の患者が増えています。 加齢が危険因子である病気は、老化と密接にかかわっています。 長寿と老化は分かちがたく結びついていますので、高齢者にはさまざまな老化現象が現れます。 老化現象は、個人差はありますがだれにでも起きる生理的な現象で異常ではありません。 しかし機能の低下があまりに急激に進行したり、異常な老化現象が起きるなど、生体 機能が障害されるようになると病気です。 認知症とは病気の名前ではなく、昔でいえば呆け、つまりこれまでできていた知的な活動ができなくなった症状や状態をいいます。 何らかの脳の病変によって記憶や思考などをはじめとする高度な脳の働きが落ち、元に戻らなくなったために、社会生活に支障が起きます。 そのため医療に加えて介護が必要になり、現在でも、認知症にかかわる医療・介護費用の総計は年間14兆円を超えているのではないかともいわれています。 超高齢社会に突入している日本で急激に増加している認知症のコストは、これからの社会に重大な影響を及ぼします。 ですから、今、認知症対策が急がれており、ことに重要な課題となっているのは、アルツハイマー病の治療法・予防法の確立です。 アルツハイマー病になると、脳の細胞が死滅していき認知症になります。 アルツハイマー病には治療法がなく、予防する方法もないのが現状です。 私たちが日々、生活を営んでいると必ずゴミが出るのと同じように、休みなく働く私たちの脳の細胞ではゴミが出ています。 暮らしのゴミでは自治体などによる回収・リサイクルが行われているように、脳にもゴミの処理システムがあります。 脳細胞が出すゴミはタンパク質の一種ですが、脳内で分泌される酵素によって分解され、血液中に流されていくのです。 脳内におけるタンパク質代謝が、他の臓器にまして重要であることは、さまざまな神経疾患の研究から明らかになりつつあります。 アルツハイマー病・プリオン病・ポリグルタミン病の発症には、それぞれ、βアミロイドペプチド・プリオンタンパク質・ポリグルタミンペプチドの蓄積が深く関っています。 多くの神経細胞が分裂後細胞であるため、その機能と生存を維持するために、タンパク質代謝によるタンパク質品質管理機構に強く依存しています。 ところが、この脳のゴミがたまってしまうことがあり、ある要因によってゴミを分解する酵素が減ってしまったりその働きが弱くなったりすることがあります。 すると脳細胞の中はゴミがたまっていき、やがてゴミに埋もれていきます。 脳細胞の内外がゴミで埋め尽くされれば、その細胞はゴミの毒にやられて死滅してしまいます。 そして隣の細胞でも、そのまた隣でもといったように、細胞死が連鎖します。 すると、細胞死が起きた部位が担っていた脳の機能が失われ認知症になります。 酵素が滅ったり働きが弱くなったりする要因は加齢で、年とともに酵素の働きが衰え、ゴミは少しずつたまっていくようになります。 だれの脳でも起こっていて、ゴミはゆっくりたまっていきます。 たまりはじめてからアルツハイマー病の発症までは、20年以上もかかることがわかっています。 そのゴミのたまりはじめが早いか遅いか、あるいはたまり方が早いか遅いか、そうした違いによって、ある人は早くにゴミがたまり、ある人はなかなかゴミがたまらずにいます。 早くにゴミがたまる人は若年性アルツハイマー病になりますが、多くは高齢になってからアルツハイマー病になります。 ずっと遅くまでゴミがたまらないでいた人は、アルツハイマー病にならずに人生をまっとうすることになります。 アルツハイマー病になるメカニズムは、まだ完全には解明されていません。 では、アルツハイマー病の治療はどうすればよいかは、ゴミがたまらないようにする、ゴミを速やかに取り除くことです。 しかし、これが実現できておらず、アルツハイマー病を治す方法は現在のところありません。 アルツハイマー病は、最先端の研究、医療をもってしても治すことのできない病気なのでしょうか、著者はそんなことはないといいます。 本書ではアルツハイマ-病とは何か、どのように解明されてきて、しかし治療法が開発されていないのはどうしてかが説明されています。 理化学研究所脳科学総合研究センターは、今、アルツハイマー病を治すことができると確信しているそうです。 これまでだれも考えつくことのなかった画期的な根本治療法の開発に取り組み、実現しようとしています。 実験は最終段階に到達し、これが実用化されれば、アルツハイマー病は注射で、あるいは飲み薬で治すことができ、予防することができるようになるといいます。 本書に書かれているのは、真に科学的知見に基づいたアルツハイマー病の病理の解明、およびその克服への道筋です。第1章 認知症とは何か/第2章 アルツハイマー病の症状と治療薬/第3章 アルツハイマー病の病変に迫る/第4章 アルツハイマー病の遺伝子/第5章 アルツハイマー病治療法開発への道のり/第6章 アルツハイマー病は治せる、予防できる/第7章 アルツハイマー病克服へ向け、今できること、必要なこと[http://lifestyle.blogmura.com/comfortlife/ranking.html" target="_blank にほんブログ村 心地よい暮らし]アルツハイマー病は治せる、予防できる【電子書籍】[ 西道隆臣 ]妻静江の闘病つれづれアルツハイマー症 初期 見抜けぬ認知症の合図【電子書籍】[ 今中基 ]