がんの約3分の1は食生活のあり方が原因だと言われています。しかし一方、発がんを抑制する働きがある食品が数多くあることも明らかになっています。最新のがんの知見と、がんと食との関わりを探ってみました。
野菜・果物のがん予防効果は広く認められています。現在、その有効成分の解明が進められています。
●図表1
日本人のがん死亡率(全部位)の推移 |
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●図表2 年代別がん罹患率・死亡率 |
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戦後、日本人のがん死亡率は増加を続け、1981年以降、がんは脳血管疾患や心疾患を抜いて日本人の死亡原因の1位。今では、日本人の3人に1人はがんで死亡しています。
ただし、年齢調整死亡率という、高齢化などによる年齢構成の変化の影響を取り除いた死亡率推移をみると、男性は1980年代後半までは増加しているものの1990年代後半からは減少傾向にあり、女性の場合はずっとゆるやかな減少傾向が続いています(図表1)。
つまり、がん死亡率の増加は、日本人が高齢化していることが主な原因なのです。がんは年齢の5乗に比例して増加するといわれます。多くのがんは40歳を越えたあたりから見つかりはじめ、50歳、60歳を過ぎ、さらに歳を重ねるほど急激に罹患率・死亡率のカーブが高くなります(図表2)。
しかし、どうして高齢になるほどがんは増えるのでしょう。がんという病気がどういうものか、改めて見てみましょう。
きっかけは遺伝子の傷
がんが起きる最初のきっかけは、遺伝子の損傷です。
人間の身体はおよそ60兆の細胞で構成されています。その一つ一つの細胞の中には人間の機能に必要な情報がすべて書き込まれた遺伝子が一組ずつ入っています。一組分の遺伝子がゲノムと呼ばれるもので、細胞のすべての働きを制御しています。がんはこの遺伝子が傷ついて変異し、異常な細胞が生み出され、さらに複数の遺伝子変異が重なることで、細胞が異常に分裂、増殖して歯止めがきかなくなったものです。
人の遺伝子の数は2万~2万5,000個といわれていますが、どの遺伝子が傷ついてもがんになるわけではなく、ある特定の遺伝子が、がんに深く関わっていることが分かっています。現在、がんに関係する遺伝子は100種類以上が知られていますが、細胞の増殖を促進する「がん遺伝子」と、逆に細胞の増殖を抑制する「がん抑制遺伝子」の2つのグループがあります。
車にたとえると、「がん遺伝子」が傷つくと細胞を増殖するアクセルが踏みっぱなしの状態になり、「がん抑制遺伝子」が傷つくと細胞の増殖に対するブレーキがきかなくなった状態になります。これらの遺伝子の異常が、細胞が増殖し続けるがんという病気につながるのです。