【パリ=宮下日出男】フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブドの本社が銃撃された事件で、逃走中の容疑者2人が9日朝、北東部セーヌエマルヌ県ダマルタンアンゴエルの印刷会社の建物に立てこもった。人質がいるとの情報もあり、捜査当局は建物を包囲していたが、9日夕、建物で銃声と複数回の爆発音が確認され、建物から煙が上がった。米CNNは特殊部隊が強行突入したと報じた。
一方、パリ東部ポルトドバンセンヌのユダヤ系食料品店にもこの日、銃を持った男が押し入り、少なくとも5人を人質に立てこもった。CNNは印刷会社での強行突入を報じた直後、この店でも複数回の爆発音が聞こえたと伝えた。仏紙ルモンド(電子版)は、印刷会社の2人と食料品店の男1人の計3容疑者が死亡したと伝えた。
食料品店に立てこもった男は、「(週刊紙銃撃事件の)兄弟を襲撃すれば人質を殺害する」と脅していたという。治安当局は2つの事件が連動しているとみて、ほぼ同時に作戦を開始した可能性もある。
食料品店に立てこもった男は、8日にパリ南方で女性警官ら2人が死傷した銃撃事件と同一犯とみられており、警察当局は9日、この事件の容疑者はアメディ・クリバリ(32)という男と断定。交際相手とみられる女(26)と合わせて情報提供を呼びかけた。同容疑者は、週刊紙銃撃事件の容疑者2人とパリで同じイスラム過激派の組織に関わっていたとされる。
AP通信によると、ユダヤ系食料品店の立てこもり事件を受け、パリ市は9日、ユダヤ人や観光客らが多く集まる市中心部マライス地区で、一部の商店街の閉店を指示した。
印刷会社の建物に立てこもったのは、パリ市内のシャルリー・エブド本社を銃撃後、逃走したアルジェリア系フランス人のサイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)。2人はパリ北東部のオワーズ県で車を盗み、ダマルタンアンゴエルに向かった。
地元メディアによると、2人は籠城中に「殉教者となる準備がある」と語っており、投降を呼びかける交渉が失敗したため特殊部隊が突入したとみられる。英BBC放送によると現場に近いシャルル・ドゴール空港で滑走路の一部が一時閉鎖された。
複数の米メディアは、兄のサイド容疑者が2011年ごろ、イエメンで国際テロ組織アルカーイダ系の武装組織「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」で軍事訓練を受けていたと伝えた。兄弟の1人は過去1年以内にシリアに渡航した形跡もあるという。AP通信によると、2人とも米政府の入国禁止リストに入っていた。