新作映画も好評 「ムーミン」が愛される理由は可愛さのなかにある“毒”
2015年2月
写真は2月6日に発売されたDVD『劇場版 ムーミン谷の彗星 パペット・アニメーション』ジャケット写真。28日からはシネ・リーブル池袋を皮切りに劇場公開もされる予定
■人気コンテンツには「陰」の部分が必須
しかし、この“怖さ”や“毒”といった部分こそ、大人も「ムーミン」に惹かれる最大の要因だ。例えばトラウマになったキャラクターとしてよく挙げられる前述のモラン。灰色の身体にまん丸の目、大きな鼻。言葉を発することもなく、冷気を出しながら無表情で見つめてくるモランは、当然のことながら誰からも好かれていない。それでもどこからともなく現れては人の集まるほうへ寄っていき、様々なものを凍らせてしまい、ますます嫌われていく。だが、一家だけはその絶望的ともいえる「孤独」に気づく。実は「ムーミン」の中でモランは「孤独」の象徴として描かれているのだという。
そうして作品自体を見ていくと、ストーリーやキャラクターに込められた、様々な「陰」の部分に気付く。作者のトーベ・ヤンソンは、第二次世界大戦をはじめ複数の戦争を体験している。これが「ムーミン」の世界観にも影響していると言われており、モランで表現されている「孤独」など、人間の身近にある様々な「陰」のテーマが、ファンタジーに置き換えて表現されている。深読みしていくと、子どもの頃は“怖い”と感じていた要素が、いつしか共感や同情といった感情に変わっているのだ。
以前、ORICON STYLEでは『妖怪ウォッチ』が大人にもウケている理由のひとつとして、普遍的でわかりやすい話のなかに「シュール」「ブラック」な要素が隠れていることを挙げた。子どもから大人まで、幅広い世代に愛されるキャラクターコンテンツには、表に見える「陽」の部分とは真逆に位置する「陰」の要素が必須なのだ。