死後直後のレーニン
ウラジミール・レーニンが没後、今年で91年になる。しかし、これだけ長い年月がたっているというのに、彼の遺体はまるで生きているように見える。
これは、ロシアが研究に研究を重ねたエンバーミング技術のおかげだ。100年にも渡る試行錯誤の結果、実社会の医学の応用にも貢献できる技術を生むことができたと、科学者たちは誇らしげに語る。
1918年に撮影されたレーニン
レーニンは、1924年1月21日、脳梗塞により亡くなったとされている。享年53歳。レーニンの遺体は、死後ほどなく保存処理された後、モスクワのレーニン廟に永久展示されていた。その遺体保存手段については長らく不明のままで、「剥製である」という説や「蝋人形ではないか」という説も語られていた。
この作業を行ったのは、マウソロス(霊廟)として知られるチームで、ピーク時には、200人もの科学者がレーニンの遺体保存に関わっていた。雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の詳細報告によると、ロシア人は、遺体の生物学的組織というより、形状や体重、色、弾力性に重きを置くことを好むらしい。
まるで眠っているかのように見えるレーニンの遺体
カリフォルニア大バークレー校の社会人類学教授アレクセイ・ユルチャクは、皮膚など体の各部分をプラスチックやほかの物質に取り換える必要があるが、昔のミイラ作りとは劇的に違うという。
レーニンの遺体は、ソ連崩壊後、モスクワの赤の広場にある霊廟で、20年以上一般公開されていたが、今年、赤の広場は閉鎖された。レーニンの生誕145周年記念の遺体公開に向けて、科学者たちが準備をするためだ。
ユルチャクの著書には、レーニンの顔にできたカビのしみをとるのによく行われた軽い漂白のやり方が書かれている。この漂白作業に携わったイリヤ・ズバルスキーによると、もし、レーニンの頬にできたしみが取れないと、殺されかねないと恐れる風潮が科学者の間にあったようだ。
レーニンの肌の状態は、毎週きちんと調べられている。精密機械を使って乾燥の程度を調べ、うるおい、色、輪郭の形状が測定されているのだ。遺体は2年毎にグリセリンと酢酸カリウムの風呂に30日間浸される。こうすると遺体が何世紀もこのままの状態で保たれるという。
レーニンの遺体のチェックし、風呂に入れる様子
レーニンの血液、体液、内臓は取り除かれたが、眉毛、口髭、顎鬚はそのままだ。パラフィン、グリセリン、カロチンでできた物質を使って、皮膚のほとんどが取り換えられている。
https://www.youtube.com/watch?v=FUkdZGeIsZU&feature=player_embedded
LENIN SLEEPS - Ленин спит
エンバーミング技術のいくつかは、現実の医学にも応用されている。例えば、腎臓移植の際、ドナーの腎臓に血液をずっと流れっぱなしにしておく技術がそうだ。
1924年に53歳で死んだレーニンの遺体は、スターリンの命によりエンバーミングされ、それ以来ずっとモスクワで公開されている(第二次大戦中は除く)。2012年、ロシアはソ連建国の父の遺体を埋葬するかどうか、歴史的な決断に向かって動き出した。レーニン自身は普通の墓に埋葬して欲しいと思っていたようで、前文化大臣のウラジミール・メディンスキーは、レーニンが死後88年も安息できないのはおかしいととした。
亡くなる直前に撮影されたレーニン
だが、プーチン大統領は、昔を知る多くの高齢ロシア人にとって、レーニンは相変わらずロシアの象徴であるとして、埋葬の決定を何度も延期している。
https://www.youtube.com/watch?v=l_d4_9ArGLw&feature=player_embedded
Lenin lives on Breathing model in Moscow's USSR Museum