自閉症発症リスクに関連づけられる遺伝子が、自閉症ではない人においては高い認識能力に結びついている可能性が、新たな研究によって明らかになった。
自閉症と知能の関係についてはまだよくわからない点が多く、研究途上にある。広汎性発達障害に分類される自閉症の症状はさまざまだが、多くの場合、言葉や知能の遅れを伴う。しかし一方で、言葉を用いない非言語的知能は平均よりも高い自閉症者が存在する。
今回、英エディンバラ大学と豪クイーンズランド大学の研究チームは、スコットランドに住む健常者、約1万人に対し、一般的な認識能力のテストとDNA解析を行った。その結果、自閉症と関連づけられる遺伝子を持っているが、実際に発症したことのない人は、認識能力テストのスコアが平均して少し高いことがわかった。
また、オーストラリアの「ブリスベンの双子の青少年に関する研究(Brisbane Adolescent Twin Study)」の対象者から選ばれた、921人の青少年に対して行った同じ認識能力のテストとDNA解析からも、同様の結果が得られたという。
今回の研究を率いたトニ=キム・クラーク博士は、「我々の研究は、自閉症のリスクを高める遺伝的変異が、非自閉症者においてはより優れた認識能力と関連することを示しています。この遺伝的変異がどのように脳機能に影響を与えるかを解明することで、自閉症者の知能に関する理解が進むのではないかと期待しています」と話した。
また、共同研究者で著名な遺伝学者であるクイーンズランド医学研究所のニック・マーティン博士は、次のようにまとめている。
「自閉症と優れた認識能力の関連性はこれまでも言われており、そのことはシリコンバレー症候群(アスペルガー症候群)や、映画『レインマン』や多くの文学作品のなかでも暗示されています。今回の研究結果は、自閉症に関連づけられる遺伝子は、それが発症しない限りにおいて、その遺伝子を持つ者にわずかな知的優位性を授けているかもしれないことを示唆するものです」。