注意欠陥や多動性、衝動性を特徴とする発達障害、ADHD(注意欠如・多動性障害)に関しての話題は何度か紹介してきたが、近年、増加傾向にあるとも言われている。というか遺伝的要素が高い(遺伝率は80%)ので昔から一定数存在していたが、最近では病名がついて、そう診断されるケースが増えていることが要因かとも思われる。
さて、突飛で落ち着きがないが、瞬発的機動力で、好奇心の赴くままに行動する「新奇探索傾向」があるADHDだが、農耕が開始された新石器時代以前の狩猟採集社会では、むしろ有利な特性であった可能性が指摘されている。
米ニューヨークのワイル・コーネル医科大学の精神薬理学部長を務めるリチャード・フリードマン教授によると、アメリカでは約11%の人が4歳から17歳までのある時点でADHDと診断されているそうだ。10人に1人以上という計算になる。教授は、「それほど多くの人がもつ症状なら、もはや障害や疾患とは呼べないのではないのでは?」 と疑問を呈している。
フリードマン教授は、「退屈や決められたやり方を嫌い、新しいことや興味を引かれる方向に向かおうとするADHDの人は、あくまでも管理された定住型の現代社会にうまく適応できないだけで、狩猟や遊牧を行う原始的な社会では成功者だったのでは?」という仮説を立てた。
教授がそれを裏付ける証拠のひとつとして挙げているのが、2008年に発表されたケニヤのアリアール族を対象に行った研究だ。アリアール族はもともと遊牧民族だが、近年になって、定住して農耕を営む集団が派生している。
ワシントン大学の人類学者ダン・T・A・アイゼンバーグの調査によれば、アリアール族の遊牧民の集団では、ADHDと関連づけられるDRD4-7Rと呼ばれるドーパミン受容体遺伝子を持つ男性のほうが、そうでない男性よりも栄養状態が良好であったのに対して、同じアリアール族でも農耕民の集団では、DRD4-7Rを持つ男性のほうが栄養不良の状態にあったという。
つまり、集中力は続かないが新しい刺激に対して行動的なADHDの人は、狩りには向いているが、時間をかけて作物を育てることには向いていないということであり、現代社会に置き換えれば、自分に適した職業や場所さえ見つけられれば、ADHDの特性を強みに変えることも可能だということになる。
実際に、フリードマン教授の患者のひとりである28歳の男性は、当初広告会社でデスクワークをしていた頃は、長時間座っていることも、ひとつのタスクを完了させるための集中力を持続することもほぼ不可能だったという。
しかしその後、スタートアップ(ベンチャー企業)に参加した彼は、デスクにいる暇もなく、出張でつねに移動している状態に置かれることになり、結果的に毎日を楽しく過ごし、さらにADHDの症状も出なくなったそうだ。
つまり彼は、環境を変えることでADHDを自ら“治療”したのだ。デスクワークではマイナスの要素であった短気や瞬間的な集中力、落ち着きのなさといったADHDの特性も、スタートアップではプラスに転じたわけだ。
多くの場合、子どもの頃にADHDと診断されても、大人になると症状が軽減される。それというのも、大人には職業や生き方の選択の自由があり、じっと座ったままのデスクワークが苦手なら、学校のように決まった時間に決まった場所にいなければならない仕事ではなく、スリルや変化の多い仕事を選ぶこともできるからだろう。
「適材適所」こそ、ADHDの特効薬なのかもしれない。
via:nytimes・原文翻訳:mallika
定時に会社に行って、決められたことをやる。って考えただけでも頭がウゥウウってなるよね。一日のうち、探し物を探している時間が一番長かったりして、自己嫌悪を繰り返しながら、興味あるものをポーンと目の前におかれると、ニンジンを追いかける競走馬のように走り出してしまったりするし。
前回パルモもADHDであることをカミングアウトしたわけだが、育った環境や、周りの環境にもかなり左右されるよね。うちの場合、おじいちゃんが人格者で、それを個性として認めてくれていたので、学校の先生にいじめられても守ってもらえた。あとは母親が音楽の先生で、3歳からピアノを習っていたので、そういったことで集中力を養っていたっちうのもあったかな。でもとにかく田舎育ちだったので異端児的扱いはかなりうけてた。
アメリカでは10人に1人がそう診断されているというけど、確かにアメリカ人ってそういう感じの人が多かった気がして、アメリカにいたときに、「あたしだけじゃないじゃん。ていうかあたし普通ジャン」。と思って安心した記憶があるな。
あとコメント欄を読んで、ADHDとアスペルガー症候群を混同している人がいるようなので、その違いを分かりやすく表したものがあるので、補足しておくことにする。以下はある臨床心理士がまとめた表だが、ADHDの性差に関しては文献によって男性が多かったり、同数だったりまちまちのようだ。
via:ADHDなのか、アスペルガー症候群なのか