8~9世紀頃に突然消え去ったマヤ文明の遺跡は、150年以上も考古学者を熱狂させてきた。その中の一つ、最も有名なマヤのピラミッドはその下に秘密を隠していた。
チチェン・イッツァのピラミッド(カスティーヨ)、あるいは「ククルカンの神殿」として知られる1000年前に建てられた遺跡の真下に、巨大なセノーテ(石灰岩大地が自然陥没して形成された井戸あるいは泉)が発見されたのだ。セノーテは内部に川が流れるほどの大きさを持つが、その天井が崩れてしまえば、遺跡もろとも崩壊してしまうのではないかと研究者たちは懸念している。
専門家は、ピラミッドを崇拝していたマヤ人にとってセノーテは重要な意味があったと考えている。地下を流れる川を介して、ピラミッド周囲の他のセノーテ湖とつながっているようなのだ。さらに、「高僧の墓」と呼ばれる、中心に聖域がある共有墓地を持つピラミッドにもつながっている可能性がある。
研究チームを率いるメキシコ国立自治大学の考古学者アンドレス・テヘーロ=アンドラーデ博士によれば、古代マヤ人は今から900~1100年ほど前、信仰の一環としてセノーテの上にククルカンの神殿を建てた可能性があるという。地下世界、創造、水を象徴するためにピラミッドが建設されたのかもしれない。
ククルカンとはマヤ神話における羽毛を持つ蛇の神で、洞窟の内部で育ち、地震とともに出現するとされている。人類に文明を授けたと創造神として崇拝されていた。
セノーテの大きさは25×35mほどで、深さは20mある。洞窟を満たす川は北から南へ流れている。また、セノーテ上部には5mほどの厚さの石灰岩があるようだ。
ここは電気抵抗探査という技法によって発見された。これは金属の探針を地面に挿し、地下を流れる電流の抵抗を測定する方法だ。水があれば、岩石とは異なる抵抗を示す。また、空洞は、電流は空気を流れないために非常に高い抵抗となって現れる。
メキシコ国立自治大学の地質学者レネ・チャベス・セグーラ博士は、洞窟内の高湿度と川が内部を侵食し、やがてピラミッドの土台を崩壊させるかもしれないと指摘する。そのとき、ピラミッドも一緒に飲み込まれていくだろう。だが、それは何世代も先のことで、幸いにも彼自身が生きている間には起きないとのことだ。
セノーテは北、西、東の他のセノーテとつながっているが、こうしたことはユカタン半島のカルスト(石灰岩台地)では特に珍しいことではない。この地域のセノーテは地下水の流れによって、縦横に天然のネットワークを形成している。
メキシコの一部ではセノーテは天然の井戸として、古代文明の水源であった。それを表すように、チチェン・イッツァは「イッツァ族の井戸口」を意味する言葉だ。イッツァ族は一帯を支配していたマヤの部族である。
研究には携わっていない考古学者のギジェルモ・デ・アンダ氏は、セノーテのネットワークは象徴的な意味があったと推測している。同氏によれば、ピラミッド周囲のセノーテは東西南北を表している。そして、中央の川は、大地に根を伸ばす木と考えられていたマヤ宇宙の中心を表す。
ウシュマルという別のマヤ遺跡では、「総督の館」と呼ばれる場所の周囲で大量の薬草が自生していることが発見された。薬草は、聖域では特に群生しており、マヤ人によって意図的に植えられたことを示唆する。同地域で見られる150種の薬草は、蛇の毒や胃の感染症、あるいは発熱などに効果がある。
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Scientists find sinkhole cave under Mexico's Kukulkan Castle Pyramid 原文翻訳:hiroching