サンフランシスコ警察は、人質ネゴシエーター、戦術隊、バイク隊、交通課から応援部隊を緊急派遣した。万が一に備えながら窓の下に防護マットを敷き、人質ネゴシエーターが非常階段で崖っぷちに追い詰めらた男性の説得に当たった。しかし、その甲斐もむなしく、こう着状態のまま3時間が経過する。
こうした状況における一般的な戦略は、自殺を図ろうとする人物の家族を呼び、思いとどまるよう説得してもらうことだ。今回の事件でも、ネゴシエーターが優しく説得に当たっている間、イーストベイに住むその男性の家族に説得要請が出された。
やっと家族が到着した。人間の家族だけではない。警察は男性が大事に育てていたという茶トラ柄の猫も一緒に連れてきた。ある警官が、男性はその猫をかわいがってたという情報を知り、連れてくるように依頼したのだ。
猫はネゴシエーターに手渡され、男性の説得交渉に参加してもらうこととなった。ネゴシエーターと共に非常階段へと向かった猫。この猫がまさに奇跡を呼ぶこととなる。
3時間も説得に応じなかった男性だが、愛する猫を見て大きく気持ちが揺らいだのろう。午後6時を回った頃、男性は建物の中に戻ってきたのだ。家族の到着からわずか45分後のことだったという。
飼い主の命を救った猫
警察の広報官アルビー・エスパルザ氏は語る。
「人間とペットの間の愛の力を舐めちゃいけない。容疑者の男性を正気に戻して、下に降りてこさせるだけの大きな力を持っているんです。」
「猫を使った事例なんでこれまでありませんでした。でも猫が解決に導いてくれたのです。男性は猫を見つめ、そして自分で窓の中に戻り、ドアを開けると大人しく警察に身柄を委ねました」とエスパルザ氏。
猫の名前は明らかにされていないが、猫をつれてくるべきだと提案した警察官の機転は素晴らしい。もしかしたら自身にもペットがいて深い絆で結ばれていたのかもしれない。
容疑者の男性が手錠をかけられ、パトカーに乗せられる際も、ずっと愛猫が見えるよう配慮されたという。
人質ネゴシエーターの仕事は、人と信頼を築くことだ。それが自殺を試みる人物であれ、犯罪の容疑者であれ、抵抗する意思をなくすだけの信頼感を築くことができれば、自ずと解決の糸口が見つかる。
今回の場合、男性は猫に強い愛情を抱いていた。彼にはこの世に愛すべき存在がいることに気が付き、その猫の姿を見ることで落ち着きを取り戻したのだ。ただそこに在るだけで人の心を癒してくれる。ペットと飼い主の絆って思っている以上に深いんだ。とにかく猫さん、グッジョブ!猫だけに、ネコシエーターとか絶対だれか言うんだろうな。