カテゴリ:情勢の危機
アメリカ軍の装備はAI(人工知能)など最新テクノロジーの導入が遅れており、もはや世界最強ではない。技術革新による武力行使のパラダイムシフトに無自覚だ。対テロ戦争に注意を向けている間に中国の脅威を見過ごしてきた結果、いま中国人民解放軍と戦ったら負ける可能性さえある。アメリカ本土への攻撃に対する防衛力も脆弱で、世界の警察として各地に戦線を広げる余裕はない。さまざまな軍用機器をインターネットでつなぐIoT戦略をアメリカ軍も取り入れるべきだ。アメリカの軍事評論家の手になる本書の主張を簡単にまとめると、以上のようになる。 衝撃の内容である。しかし、いたずらに危機感をあおるわけではない。平易な言葉でアメリカ軍や議会、軍需産業の問題点をあげ説得力がある。一般のアメリカ国民にも警鐘を鳴らし世論を動かしたいからだろう。ますます本書の主張が真実味を増す。 本書の重要な指摘のひとつは、近年のテクノロジーの進歩により、戦場における攻める側と守る側の力関係が逆転し、守備側が有利になっているという点だ。敵軍の到来を受けて立つ側にすれば、人工衛星を使った監視システムのおかげで、敵の部隊の動きを補足できる。さらに、そうした位置情報をもとに多数のドローンなどを使って、空母などを攻めればアメリカ軍の攻撃力を封じられる。中国は高速で命中精度が高いミサイルも配備しており、アメリカ軍によるアジア海域への展開を阻止できるという。 アメリカ軍は世界の警察として世界各地に派兵し、圧倒的な物量と強さで敵を制圧するという戦いかたを宿命づけられている。1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争での勝利が典型的な例だ。しかし、筆者はこうした戦績は、敵軍が弱かっただけであり、過去の栄光がむしろアメリカ軍の変革を遅らせてきたという。アメリカ軍が装備している兵器は91年以来、あまり進歩していないのも不思議ではない。アメリカ軍の弱さを本書では次のように説明する。 キル・チェーンを進化させなければ意味がない 本書のタイトルである、The Kill Chain は軍事用語だということを本書によって初めて知った。軍事行動を遂行する際の3段階のプロセスのことを指す。(1)現状を認識し(2)何をするか決断し(3)実際にアクションを起こす、この3つの流れをキル・チェーンと呼ぶ。多額の国防費をつぎ込んで高性能の戦闘機をいくら買いそろえても、このキル・チェーンを進化させなければ意味がない。この軍事プロセスの3つのステップをAIやIoTなどの導入によって改善できると説く。そして、中国が実際にそうした取り組みを先に進めていると警鐘を鳴らす。 中国は米軍を中国に近づかせない実力を持っている 2001年に起きたアメリカ同時多発テロをきっかけに、アメリカの安全保障政策が対テロ戦争へとシフトし、中国の脅威を見過ごしてきたと本書は指摘する。一方で、中国は1991年の湾岸戦争でアメリカ軍の圧倒的な攻撃力を目の当たりにして、相手の攻撃力を封じることによって、巨大な敵に打ち勝つ戦略を模索してきた。太平洋上のできるだけ遠いところでアメリカ軍をとらえるレーダーを開発したり、空母を破壊する長距離ミサイルを開発したりしてきた。アメリカ軍が中国にたどり着く前に、アメリカ軍の巨大なプラットフォーム(空母など)を破壊し、その戦闘能力をそぎ落とす実力を中国はすでに持っているという。中国の戦略を本書は次のように的確に述べている。 1996年に中国が台湾への圧力を高めるためミサイル演習をした台湾海峡危機では、アメリカのクリントン政権は台湾海峡に航空母艦を派遣し、中国の動きを封じ込めた。しかし、今ではアメリカ軍にはそのような実力はないと本書は主張する。 本書はアメリカ軍のデジタル化の遅れを、いろいろ実例をあげて説明しており驚きの連続だ。例えば、筆者がアメリカ軍の知人からかつて聞いた話によれば、収集したデータをもとに攻撃目標の具体的な位置を特定するのに、最終的にはグーグルマップを使っていたという。F22戦闘機とF35A戦闘機は同じ会社が製造したものなのに、攻撃目標に関するデータや互いの位置情報を直接やり取りできない。人間が無線で口頭でやりとりするしかない。 民間のハイテク技術に大いに劣る アメリカには画像処理に強い半導体のエヌビディアという会社がある。アメリカ軍で配備しているシステムでエヌビディアの画像処理ユニットがいくつ稼働しているか、経営者に聞いたところ答えはゼロだったという。話はさらに以下のように続く アメリカ軍のデジタル化が遅れている背景として、軍事予算を巡る官僚主義の横行や、軍需産業の寡占化による技術革新の遅れ、といった構造的な問題もあげる。特に、グーグルやフェイスブック、アップルなどシリコンバレーのハイテク企業の技術が生かされていない。これからの戦場は、人工衛星や高性能センサーを活用してデータを収集し、それを高スピードで分析処理した側が優位になる。すばやく分析したデータをもとに、AIを搭載した無人の自動戦闘機が攻撃目標の位置を正確にとらえ攻撃するのが未来の戦い方だという。集めるデータは膨大になり、その処理は人間の能力を超える。だからこそ、アメリカ軍はAIの導入などデジタル化を急ぐ必要があると訴える。 日本としては心細い 本書はアメリカ軍の在り方そのものを、根本から見直す必要性を次のように訴えている。 つまり、アメリカは世界の警察としての地位を捨て、広げすぎた戦線を縮小しろというのだ。まずは、アメリカ本土の防衛力を高めながら、軍のデジタル化を進め新たなハイテク戦争に備えよ、というわけだ。いまのアメリカ軍では中国に歯が立たないのだから、反省して出直す必要があるということだろう。現実に隣国である中国の脅威が増すのを目の当たりにしている日本としては心細い限りだ。
米軍はすでに軍事力でC国を倒すことはとできない! 日本人が騙されている大きな嘘2! そねため日本を犠牲にし謀略によってC国を倒し最後は西洋列強で分割統治する! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.10.17 00:55:44
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