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カテゴリ:明日香のこと
手術前夜、飲食は19時までに定量の半分程度まで、飲水は21時まで、そして21時に浣腸、という流れだった。 子供だから当たり前だけど、浣腸後に 「もうお茶もジュースも飲めなくなるから、今のうちに飲んどき!」 と言っても、明日香は浣腸が不愉快でぐずっているのであまり水分を取ることが出来ず、案の定夜中に「お茶~!」と号泣する羽目になってしまった。
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いよいよ手術当日、朝食も抜きで、麻酔を効きやすくする粉薬を飲ませられ、無理矢理手術着に着替えさせられて、明日香は朝から号泣。
朝9時に手術室に入室なので、8時50分にこの日担当してくれる看護婦さんが迎えに来た。明日香は泣いて移動ベッド(手術室と病室間の移動に使う)に入りそうもないので、私が明日香を抱っこし、パパと看護婦さんと一緒に手術室の前まで歩いていった。 手術室の前で、私は看護婦さんの腕に明日香を託した。看護婦さんと明日香は金属の扉の向こうへ消えていった。
私は、初めて涙が出た。
泣いている私を見て、パパは 「大丈夫だから。任せておけばいいから」 と私に言ったが、私は手術が不安で涙が出たのではない。ここの小児科・小児外科は、全国でもトップクラスといわれる病院だし、医師も看護師も質が高い。
あの金属的な手術室で、マスクで顔もわからないスタッフに取り囲まれ、たった一人で不安と戦っている明日香の気持ちを思い、涙が出たのだ。
後で戻ってきた看護婦さんに 「手術室に入ってからも、明日香は泣いていましたか?」 と聞くと、
「いいえ、明日香ちゃんはお母さんと離れるときに少し泣いていたけど、手術室に入ってからは、『ここは頑張らないといけない』とわかったらしく、本当にお利口にしてましたよ」
という答えが返ってきた。また涙が出そうになった。
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手術時間は麻酔する時間も含めて5~6時間の予定。胆管を切除して小腸を切ったり縫ったりするので、方法は単純ながらも時間がかかり、大きな手術に分類されるのだそうだ。
手術中、私たちは病室で待機するよう言われていたので、病室に戻って椅子に座ると、パパはおもむろにその日の日経新聞を取り出し、普通に読み始めた。
「よくそんなに普通に行動できるね」
と私はパパにイヤミを言ってみたりしたが、30分もたつと、私の方もだんだんと心が落ち着いてきたので、新聞やファッション雑誌を読むことにした。
そして正午になると、私は「明日香が戻ってくる前にお昼ご飯を食べておかなくては」と思い、「お腹はすいていない」と言うパパを引きずりながら食堂に向かい、担々麺を平らげてしまった。ちなみにパパは、カツ丼を食べていた。
さて、私とパパ、どっちの神経が図太いんでしょうか? あはは!
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予定通り5時間後の午後2時、明日香の手術は終了し、私とパパは一緒に手術室の前まで迎えに行った。
小さな移動用ベッドに寝かされた明日香の鼻には管が通され、パジャマの隙間からは腹部の大きなガーゼが見えていた。無事に手術が終了したと聞かされると、私は本当に安心した。涙はもう出なかった。
手術の麻酔から覚めた子供は、しばしば錯乱状態に陥り、時にやむを得ず縛り付けることもあると聞いていたのだが、明日香は全然暴れたりしなかった。麻酔が切れているはずの時間になっても、時々目を開けて私はパパを確認し、また目を閉じて眠るということを繰り返していた。よかった。
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