またまたヤンソギルさんの紹介です。
ヤンソギルさんの一つの柱 夏の炎と同じ流れの作品。
タイのミャンマーの国境近くの山岳民族のある部落に男が車で1日半かけてたどり着く。一軒の家を訪ねる。そこには冷蔵庫と電波状況が悪くほとんど砂嵐状態でしか見えないテレビがある。この家には8歳になるセンラーがいる。この辺りで冷蔵庫とテレビがある家はここしかない。おとこは父親とセンラーの値段の交渉に入る。この家にある冷蔵庫とテレビはこのようにしてこのこのセンラーの姉を売ったお金の代償だ。バンコクに連れて行かれたセンラーは同じ境遇の子供たちと共に幼児売買春を強制される。ほかの売春宿にに売り飛ばされたセンラーの姉は売春によりAIDSにかかり生きたまま黒いビニール袋に入れられ巨大なごみの山に捨てられる。幼児性愛者たちは子供たちに自分の快楽のためだけに火薬やホルモン注射を使い子供たちを死に至らせたりする。また裕福な白人は養子縁組の形で幼児セックスの対象として幼児買取、日本その他の臓器移植希望患者に提供されるための生きたままの臓器提供。
こういった悲惨な事々を阻止しようとNGO団体社会福祉センターが日本の新聞記者を通じて世界に告発し幼児犯罪を撲滅しようとする。その抵抗は凄まじくスラム全体、売春組織、地元警察 軍までの規模で情報提供者やセンターの仲間を殺害し、また暴行・脅迫する。
社会福祉センター側は抵抗手段として全国統一大行進を成功させよう周りに呼びかける。満足できる参加者が集まり成功するかに見えたが・・・・
読んでいくあいだ自分自身が登場人物たちに置き換わって、息苦しいどこにも出口の無い絶望的な気持ちになってきて暗闇に向かって大声で叫びたくなる。大人の都合のみで殺された子供たちはいとも簡単に闇から闇に葬られる。生まれた時からの貧困ゆえ将来の事、今より良くなる事など想像も出来ない。親がそうであり、部落、スラム・・・金儲けから外れた社会では弱いものほど価値もなく生きてく権利すら無い。絶望しかない。何も知らない子供たちが常識や喜びや愛情も知らないまま恐怖と苦痛の中で生きて死ぬ。現実に行われているだろうと充分考えられるところが余計に恐ろしく思えた。