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鏡の国の落としあな

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2010.12.19
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カテゴリ:歴史と文学



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モーツァルトとサリエリを描いた映画『アマデウス』で、モーツァルトがウィーンの宮廷で、ヨーゼフ二世に面会する場面がありました。

確か、サリエリが作曲した歓迎の曲を、皇帝自身が弾いて出迎えた、というシーンだったと思いますが、あの皇帝がその見かけのせいか、子供心にかなり怖かった、という記憶があります。

その場面の動画はこちら
 
下矢印


Mozart Vs Salieri
Mozart Vs Salieri
Mozart Vs Salieri

 

 

ちょっとサリエリが気の毒になる場面なんですけども、この皇帝、やはりすごく怖そうに見えません??(予断ですが、皇帝の後ろに立ってる家来3人組のひとりのメガネをかけた人が、知り合いのピアノの先生(←女性!)に似てたので、当時これを見たとき爆笑してたり・・・・)

ここで質問。

 

この怖そうな顔の皇帝が、自分の奥方に顔を合わしたくないばっかりに、窓の外をあの顔とあの格好でコソ泥のように這って、 別の部屋に移動するって想像つきます??

 

マリア・テレジアの長男(マリーアントワネットの兄)、
 
神聖ローマ皇帝 ヨーゼフ二世
 
下矢印


488px-Georg_Decker_001.jpg



この皇帝に生涯に2度結婚していますが、最初の妻はパルマ公女のイザベラでした。

もちろん政略結婚ですが(ハプスブルク家は婚姻関係で領土を広げるのが政策のようなので、あまり他の王家のような血みどろなイメージはない)、結婚前に父、フランツ1世から夫婦の営みダブルハートについて聞かされたときはショックを受け、親しかった家臣に、「夫婦のその義務を果たすほうが、戦場に出向くよりもよっぽど怖い」とか、「そのことを考えれば考えるほど、吐き気を催しそうだ」 などと、その恐怖を打ち明けています。

ところが。

オーストリアに嫁いできたこのイザベラ王女にヨーゼフは、会った瞬間から一目ぼれ目がハートをしてしまいます。

あれほど怖がっていた夫婦の営み云々も、フタをあけてみればかえってその虜になってしまい、そのあまりの熱心さにイザベラ妃が家臣の聖職者に、

「大公が狩や乗馬のほうで体力を使って、アチラのほうに体力が残らないようにしていただけたらよいのですが」

などと打ち明ける始末。

 

 イザベラ妃

下矢印

473px-Jean-Marc_Nattier_005.jpg



残念なことに彼女は、夫ヨーゼフよりもその妹、マリア・クリスティーネのほうに興味があったらしく、この2人が一日に数回以上交わした手紙は、友情以上の内容になってしまう、殆ど恋文ともとられるような内容になっているため、彼女らをレズビアンだった、ととらえる歴史家もいるようです。(もちろん、それを否定する歴史家もいますがここでは割愛します)

ともかく、夫の熱愛を受けた彼女は天然痘で22歳という若さでなくなってしまいます。

ヨーゼフのショックはかなりひどく、傍目にも気の毒になるほどやつれこんだ息子を心配した母、マリア・テレジアは、息子がイザベラ妃との間に女子1人しかもうけてないこともあり、跡継ぎの男子をもうけるという義務のため、彼の意思に逆らい再婚を図ります。

 紆余曲折の末、選ばれたのがバイエルンのマリア・ヨゼファ皇女です。

 

 嫁ぎ先で『ブス』と言われ夫から全く愛されなかったヨゼファ妃失恋

下矢印

471px-Maria_Josepha_von_Bayern.jpg



先の妃のイザベラはかなりの美貌の持ち主で、マリア・テレジアは自分の息子の嫁が誇らしかったといいますが、2番目のこのヨゼファを婚姻後初めて目にした彼女は、ヨゼファの醜女ぶりに腰を抜かし、息子に同情したとか。

ヨーゼフはもともと、再婚する気なかったのに無理やり母帝に政略結婚させられたこともあって、容赦なくこの妻を冷たくあしらい、自分から遠ざけようとします。

テューダー朝のヘンリー8世などは、自分の4番目の妻、Anna Von Kleveが、会ってみたら肖像画(彼はそれまで妻に会ったことなかった)とあまりにもかけ離れて、『ブス』で自分のタイプでないので、即、離婚しようとして結局彼女を追放したのですが、邪魔になったら追放されたり(1&4番目の妃)、処刑されたりした(2&5番目の妃)ヘンリー8世の妃達よりはちょっとだけ、マシ・・・なのでしょうか。いずれにせよ、哀れです。

 

ヨゼファはそのうち、ウィーンの宮廷でのお笑い者になってしまいます。あまりにも夫や宮廷人から敬遠、侮蔑されるヨゼファが気の毒になって、マリア・テレジアは息子を諭しますが、効果は無し。

それどころか、この話がバイエルン選帝侯の耳に入り、ウィーンとミュンヘンの間が気まずくなってきてもお構いなし、大嫌いな妻を見ないですむように、とウィーン不在にしてしまう有様。

政略結婚の犠牲なのは、ヨーゼフだけではなく妻のヨゼファも同じこと。それなのに自分のことばっかり考えるのはあまりにも自己中心のような・・・・・。

ヨゼファはヨーゼフの親戚筋にあたり、当時からハンサムと評判のよかった自分の又従兄(だったかな?)と結婚の申し込みをうけ、喜んで承諾してウィーンに来た結果がこれ。

冒頭の質問にあった話、本当なんですね。

 

あの怖そうな皇帝が、宮殿の外の壁にヤモリのようにへばりついて 移動するなんて。

それも自分の妻の顔を見たくないばかりに。

 

この話を知ってからあのアマデウスのシーンを見ると、なぜか私笑っちゃうんですよね。

あの格好と顔で壁にへばりついてる姿をどうしても想像してしまうので。

 

ちなみにヨゼファは姑マリア・テレジアや 小姑のマリア・クリスティーネとともに、天然痘にかかってしまいます。

マリア・テレジアとマリア・クリスティーネは症状が軽かったのか、回復してしますが、長年の冷たい夫や宮廷人からの仕打ちでヨゼファは精神的にかなり弱ってたのでしょう、病気に立ち向かう体力などなく、2年半の不幸な結婚生活から28歳の若さで、去っていきます。

誰からもかえりみられることなく。

彼女の死後、ヨーゼフは生前彼女に冷たくあたったことを後悔しているという内容のことを近臣の打ち明けているのですが・・・・・・・・。

本当にブスかどうか事実はおいて、醜女と言われたヨゼファですが、では、可愛らしかったら夫から愛されるのか?というとそうではないケースもあります。

プロイセン王、フリードリッヒ大王の妃、エリザベート・クリスティーネがその例です。

彼女の話も読んでて、あまりの仕打ちに腹が立つやら気の毒になるやら・・・・なのですが、この話はまた次回に。

 






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Last updated  2010.12.20 06:40:57
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