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カテゴリ:文学その他
野人を自称されるUBSGWさんのブログで知ったのだけれど、昨日、ノーマン・メイラーが死んだのだそうだ。重厚長大な作品と、いささかエキセントリックな行動で知られていた彼の名前も、最近はあまり聞かなくなっていたが、調べてみると生年は1923年で、享年84歳だったそうだから、とりあえずは大往生ということになるだろう。 日本の作家でいうと、三島由紀夫や安部公房とほぼ同世代であり、つまり第二次世界大戦という、20世紀最大の事件の荒波をもろに被った世代である。実際に、彼は南太平洋での日本軍との戦闘に従軍し、戦後は 「進駐軍」 の兵士として千葉の銚子で1年ほど過ごしたのだそうだ。 というわけで、わが家の書棚から発掘して見つけ出したのは、次のとおり。 『裸者と死者』上・下(新潮文庫:山西英一訳) 『聖書物語』(ハルキ文庫) メイラーという作家を一言で表すとすれば、「スキャンダラスな作家」 であり、公的にも私的にも 「スキャンダラスな人生」 を送った人ということになるだろう。 世代も同じで、捕虜としてドレスデン空襲を経験したヴォネガットの作風が、くりかえし 「そういうものだ」 とつぶやく、諦念を帯びた隠者風のものであったのに対して、メイラーの作風は、現代文学のいわば 「王道」 をいく者としての強烈な野心と、自己の才能と知力に対する過剰なまでの自信に裏打ちされたものである。 つまり、一貫してアメリカの政治と社会に対して批判的態度を貫きながらも、彼自身の生き方は典型的なアメリカ人そのもののそれであったと言えるだろう。なにしろ6回の結婚をして、9人もの子供をもうけたそうだから。ちなみにモンローは3回、エリザベス・テイラーは8回(相手は7人)結婚しているということだ。 ぼくのうちには、老人の苦々しい消耗と、頭のいい青年の小生意気な議論がとなりあっている。だから、ぼくはおよそ36というぼくのほんとの年齢の人間ではない。怒りはぼくを残忍と紙一重にした。腰をおろしてこの作品集のための説法を書くぼくの気分のうちには、傲岸不遜なものがたぶんにある。・・・ だから、まちがっていようがいまいが、今日のアメリカの小説家のうちで、いちばん深刻な影響をあたえるのは、かくいうぼくの現在ならびに将来の作品であるとまで、ぼくがあえて考えるのは明らかである。 「ぼく自身のための第一の広告」
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